(19日、第106回全国高校野球選手権東東京大会4回戦 成立学園8―5豊南) 「翼まで回せ」。3点を追う八回裏、豊南のベンチで、四番の伊藤翼(2年)の前にチャンスを作ろうと、そんな声が飛び交った。 安打と四球などで二死満塁。絶好の場面で伊藤…

(19日、第106回全国高校野球選手権東東京大会4回戦 成立学園8―5豊南)

 「翼まで回せ」。3点を追う八回裏、豊南のベンチで、四番の伊藤翼(2年)の前にチャンスを作ろうと、そんな声が飛び交った。

 安打と四球などで二死満塁。絶好の場面で伊藤に打席が回ってきた。

 マウンド上の成立学園のリリーフ投手・坂梨斗夢(3年)の球数はこの時すでに110球を超えて、疲れが出るころ。「甘い球は必ず来る。絶対に自分で決めてやる」。伊藤は本塁打を自身に課した。

 追い込まれてから、ファウルで粘り7球目。直球が真ん中高めに浮いた。「来た」

 フルスイングで打ち返した打球は、左翼へ放物線を描いた。打球に向かって叫んだ。しかし、フェンスのわずか手前で、左翼手の足が止まった。逆転まであと数メートルだった。

 伊藤は試合後、打った後のことを「全く覚えていない」と話した。「相手のほうが勝ちたい気持ちが上だったということ」。公式戦初本塁打は、新チームで目指す。「次は自分のバットで勝利に導きたい」=都営駒沢(中村英一郎)