(18日、第106回全国高校野球選手権千葉大会4回戦、市船橋6―1東京学館浦安) 満身創痍(そうい)だった。 雨による継続試合の影響で3日連続の試合となった東京学館浦安。 一回裏1死二塁で坂本悠真(3年)が打席に立った。初回を先発の大家雅…

 (18日、第106回全国高校野球選手権千葉大会4回戦、市船橋6―1東京学館浦安)

 満身創痍(そうい)だった。

 雨による継続試合の影響で3日連続の試合となった東京学館浦安。

 一回裏1死二塁で坂本悠真(3年)が打席に立った。初回を先発の大家雅史(1年)が先頭打者に安打を許すも、無失点で切り抜けた。「先制して(後輩を)楽にさせたい」

 フルカウントから内角に甘く入った変化球を左翼線に運んだ。二塁走者は生還したが、一塁を蹴って二塁を狙った坂本は市船橋の好守に阻まれ、タッチアウト。「点は取れたけど、チャンスを潰してしまった」。喜びよりも悔しさが残った。

 六回表に市船橋に勝ち越された。この試合、坂本は2三振と球場に快音は響かなかった。「チャンスを作れず三振で、つらい中でも投げてくれた1年生をカバーできなかった。実力不足でした」

■前の試合で手首に死球

 坂本は3打数3安打と大活躍だった前の試合の習志野戦で、手首に死球を受け、痛み止めを飲んで臨んでいた。照りつける日差しが選手の体力も削る。

 九回表の守りで、坂本は左手首の痛みを訴え、試合が一時止まった。「最初から痛みはあったけど、きつくなってしまった」

 そして九回裏、最後の攻撃。2人目で坂本に打順が回る。橋口孝司監督は代打を提案した。最初は断ったが、「ちゃんと振れるのか」と聞かれ、別の選手が準備していることを知り、「厳しいです」と打席を譲った。

 最後になるかも知れない打席だった。「打ちたい思いはあったが、仲間を信じて任せた」。代打に出た打者は右前安打を放ち、坂本の思いをつないだ。だが、その後併殺を決められ、試合が終わった。

 坂本の高校野球最後の打席は意識する前に終わっていた。「涙が出ない。実感がまだ湧かない」。しかし、最後に信じた仲間の一打を見られた。「きついこともあったけど、みんなに支えられた3年間だった」=県(杉江隼)