今シーズンの前半を終えて、大谷翔平(ロサンゼルス・ドジャース)は誰よりも三冠王に近い位置にいる。打率.316がナ・リーグ2位、29本塁打が1位、69打点は3位だ。 3部門ともトップ10にランクインしているナ・リーグの3人とア・リーグの4人…

 今シーズンの前半を終えて、大谷翔平(ロサンゼルス・ドジャース)は誰よりも三冠王に近い位置にいる。打率.316がナ・リーグ2位、29本塁打が1位、69打点は3位だ。

 3部門ともトップ10にランクインしているナ・リーグの3人とア・リーグの4人のうち、すべて3位以内は大谷だけ。3部門とも5位以内に入っている選手も、大谷のほかにはアーロン・ジャッジ(ニューヨーク・ヤンキース)しかいない。ジャッジは34本塁打と85打点がア・リーグ1位、打率.306は4位につけている。

 ジャッジの三冠王は、今のところ難しそうだ。大谷の打率がナ・リーグ1位のクリスチャン・イエリッチ(ミルウォーキー・ブルワーズ)と10ポイント差であるのに対し、ジャッジはア・リーグ1位のスティーブン・クワン(クリーブランド・ガーディアンズ)に46ポイント差をつけられている(.001=1ポイントとして表記)。


大谷翔平はオールスターでも初HRを放つほど絶好調

 photo by AFLO

【打率】
1位 .326=クリスチャン・イエリッチ(ミルウォーキー・ブルワーズ)
2位 .316=大谷翔平(ロサンゼルス・ドジャース)
3位 .310=ルイス・アラエス(サンディエゴ・パドレス)

 打率トップ3は、大谷の上下に首位打者の経験者が並ぶ。イエリッチは2018年の打率.326と2019年の打率.329がナ・リーグ1位。ルイス・アラエス(サンディエゴ・パドレス)は2022年がア・リーグ1位の打率.316、2023年はナ・リーグ1位の打率.354だ。

 イエリッチはシーズン序盤に腰を痛めて1カ月近く離脱したので、大谷やアラエスと比べると打数が100以上少ない。そのため、1打数ごとに打率の変動する幅は上がるにせよ下がるにせよ、ふたりより大きい。

 なお、イエリッチは規定打席の502まであと200だ。このままいくと到達しそうだが、もし届かなくても、首位打者を獲得できるルールがある。たとえば、492打席でシーズンを終えて10打席足りない場合、その分を10打数0安打として加えて再計算した打率がほかの選手を上回れば、首位打者となる。

【本塁打王争いは後半戦の量産ペースが勝負】

 アラエスは6月以降、打率.260と調子を落としている。とはいえ、いつまでもそうだとは思えない。そのバッティングは異彩を放つ。スタットキャストのデータによると、バットを振るスピードはレギュラークラスの選手のなかで最も遅く、ボールに当たるまでにバットが動く距離は最も短い。パワーは生み出せないものの、コンパクトに振って最短距離で投球を捉え、ヒットにしているということだ。

【本塁打】
1位 29本=大谷翔平(ロサンゼルス・ドジャース)
2位 26本=マーセル・オズナ(アトランタ・ブレーブス)
3位 22本=クリスチャン・ウォーカー(アリゾナ・ダイヤモンドバックス)

 本塁打王争いは、大谷とマーセル・オズナ(アトランタ・ブレーブス)の一騎打ちのようにも見える。もっとも、そう判断するのはまだ早い。

 3年前、ア・リーグの本塁打王は48本のブラディミール・ゲレーロJr.(トロント・ブルージェイズ)とサルバドール・ペレス(カンザスシティ・ロイヤルズ)が分け合い、大谷(当時ロサンゼルス・エンゼルス)は2本差の3位に終わった。前半は、33本の大谷がトップに立ち、ゲレーロJr.は5本差の2位。ペレスに至っては、大谷より12本も少なかった。

 昨シーズン、後半に20本以上のホームランを打った選手は8人いた。そのうちの3人は今シーズン、ナ・リーグ本塁打ランキングのトップ5にランクインしている。2位(26本)のオズナは昨シーズンの後半に23本。5位タイ(19本)のカイル・シュワーバー(フィラデルフィア・フィリーズ)とピート・アロンソ(ニューヨーク・メッツ)は昨シーズンの後半に25本と20本を記録した。

 オズナの後半20本塁打以上は昨シーズンが初めてだが、あとのふたりは違う。シュワーバーは2019年の後半が20本。アロンソは2019年の後半が23本、2022年の後半は20本だ。2019年にメジャーデビューしたアロンソは短縮シーズンの2020年を除く4シーズン中、後半20本塁打未満は2022年(16本)だけ、ということになる。

【打点を稼ぐにはチームメイトの協力も必須】

 この3人だけでなく、現在4位(21本)のブライス・ハーパー(フィリーズ)と5位タイ(19本)のテオスカー・ヘルナンデス(ドジャース)も、後半に20本塁打以上のシーズンがある。

 一方、大谷が後半に打ったホームランは、2018年と2022年の15本が最も多い。後半のペースは、2018年の12.53打数/本が最速。昨シーズンの後半は13.00打数/本だった。

 シーズンの前半は、2021年が9.12打数/本、2023年は10.66打数/本。今シーズンは12.76打数/本だ。

【打点】
1位 77打点=マーセル・オズナ(アトランタ・ブレーブス)
2位 70打点=アレク・ボーム(フィラデルフィア・フィリーズ)
3位 69打点=大谷翔平(ロサンゼルス・ドジャース)

 打点王争いは、2位(70打点)のアレック・ボーム(フィリーズ)が有利かもしれない。打席に立った時、得点圏にいた走者の人数は、オズナが129人、大谷は127人、ボームは144人だ。

 オズナと大谷の打点の内訳は、自身のホームイン(=本塁打)が最も多い。ボームの打点は、チームメイトのシュワーバーとトレイ・ターナーのホームイン各16度が最多だ。ボームのホームランは11本だが、二塁打33本は両リーグで最も多い。打順は4番が多く、1番〜3番にはシュワーバー、ターナー、ハーパーが並ぶ。

 こうして見てくると、大谷の三冠王は、可能性こそあるものの、なかなか容易ではないことがうかがえる。

 最後の三冠王は、そう昔ではない。今から12年前の2012年に、ミゲル・カブレラ(当時デトロイト・タイガース)が打率.330、44本塁打、139打点を記録し、3部門ともア・リーグ1位に位置した。昨シーズンまでカブレラは現役選手だった。一塁を守っていて、出塁した大谷の股間にタッチした場面を覚えている人もいるだろう。

【MVPとワールドシリーズ優勝もセット?】

 ただ、カブレラの前の三冠王は、1967年のカール・ヤストレムスキー(当時ボストン・レッドソックス)までさかのぼる。こちらは現在、孫のマイクがサンフランシスコ・ジャイアンツでプレーしている。ナ・リーグの三冠王はさらに遠く、1937年のジョー・メドウィック(当時セントルイス・カージナルス)が最後だ。

 それだけに大谷が三冠王となれば、2年連続3度目のMVPにも選ばれるのではないだろうか。二刀流だったこれまでと違い、今シーズンの出場はDHのみ。DHがメインのシーズンにMVPを受賞した選手は、過去にいない。

 なお、1950年以降の三冠王は、4人ともMVPを受賞しただけでなく、その年のワールドシリーズに出場し、ホームランを打っている。

 1967年のヤストレムスキーと2012年のカブレラは優勝できなかったが、1956年のミッキー・マントル(当時ヤンキース)と1966年のフランク・ロビンソン(当時ボルチモア・オリオールズ)は、三冠王&MVP&ワールドシリーズ優勝だ。ロビンソンはシリーズMVPにも選ばれた。ちなみに1956年も1966年も、ワールドシリーズで敗れたのはドジャースだった。