(18日、第106回全国高校野球選手権福島大会 学法福島1―2只見) 延長十回、無死満塁。一打サヨナラの場面でも、学法福島のエース岩口柊介投手(3年)はマウンドで笑顔だった。 初回に先制され、「相手は直球に強い」と見抜いてからはスライダー…

 (18日、第106回全国高校野球選手権福島大会 学法福島1―2只見)

 延長十回、無死満塁。一打サヨナラの場面でも、学法福島のエース岩口柊介投手(3年)はマウンドで笑顔だった。

 初回に先制され、「相手は直球に強い」と見抜いてからはスライダーでカウントを取り、同じ軌道の内角直球で三振を奪った。六回以降は毎回得点圏に走者を背負う苦しい展開。それでも仲間の笑顔に助けられ、ピンチをしのいできた。

 チームの合言葉は「ニコニコ・ベースボール」。ピンチの時は「真顔厳禁」だ。どんなに苦しくてもみんな白い歯を見せ、ベンチからは何度も「ニコニコ!」と声が飛んだ。「笑顔でいれば魔法にかかる。魔法にかかればへっちゃら」。岩口投手もそう自分に言い聞かせた。

 八回、ベンチの選手からタオルを受け取り手汗をぬぐった。その回を無失点で切り抜け戻ると、そのタオルを再び渡された。藤森孝広監督は「首に巻いてみろ」。短くて首には巻けない。「『負けない』タオルだ」。監督のダジャレを聞き士気が高まった。タオルをポケットにしのばせ、マウンドに立ち続けた。

 最後は130球目に投じたスライダーがすっぽ抜け、押し出し死球に。初めて顔をゆがめて泣いた。

 試合後は「笑顔でやり切れた。悔いはないです」とまた笑顔だった。(酒本友紀子)