(18日、第106回全国高校野球選手権佐賀大会3回戦 佐賀商1―6白石) 1点リードの五回、1死満塁の好機で白石の打席に入ったのは主将の長森大智選手(3年)。スクイズも想定してベンチを見ると、溝上夏樹監督のサインは「打て」。「自分で決めて…

 (18日、第106回全国高校野球選手権佐賀大会3回戦 佐賀商1―6白石)

 1点リードの五回、1死満塁の好機で白石の打席に入ったのは主将の長森大智選手(3年)。スクイズも想定してベンチを見ると、溝上夏樹監督のサインは「打て」。「自分で決めてやろう」と思い切りバットを振ると、打球は左翼席に飛んだ。

 ベースを一周し、本塁を力強く踏みつけた。「多くの人たちが自分らが勝つとは思っていなかったと思う。『白石でもこれだけやれるんだ』という気持ちで踏みしめた」

 この日は三回2死満塁の場面でも逆転の2点適時打を放ち、全6点をたたき出す活躍だった。

 チームは昨秋から県大会で思うように勝てず、主将の責任を感じてきた。自宅での素振りの動画を監督に見せて助言を求めるなど、努力を欠かさなかった。「その成果が出た」と溝上監督も喜ぶ。「率先して動いてくれるから、他の選手もついていく。とにかく頼りになる」

 実家は武雄市内の寺で、長森主将自身も、お盆の季節には法衣を着て自転車で檀家(だんか)を回り、お経をあげるという。「皆さんからは『お経はいいから甲子園に行ってくれ』と言われている」

 1年生の時から外野手として夏の佐賀大会には出場してきた。今大会もセンターを守るが、背番号は「1」。「エースになる」と心に決め、冬に投球練習を始めた。経験の乏しさを補おうと、寒い中で投げ込んだのが裏目に出て、春先に肩を痛めてしまった。「今も不安はある」というが、溝上監督は、最後の勝負どころを迎えたら、長森選手に任せると決めている。(小陳勇一)