(17日、第106回全国高校野球選手権山口大会 新南陽5―6徳山) 「ランナーを二塁に進めたい。自分も生きて次につなげよう」 三回無死一塁。打席に立った新南陽の松村岳主将(3年)はそんな一念で右方向へバントを決めた。 打球は相手投手が差し…

 (17日、第106回全国高校野球選手権山口大会 新南陽5―6徳山)

 「ランナーを二塁に進めたい。自分も生きて次につなげよう」

 三回無死一塁。打席に立った新南陽の松村岳主将(3年)はそんな一念で右方向へバントを決めた。

 打球は相手投手が差し出したグラブの先を転がり、内野安打に。後続の適時打などで2点を先制した。

 「狙い通り。自分が生きるにはあの方向しかないと考えて転がしました」と振り返る。

 原田正太郎監督が掲げるスローガンは「人間力野球」。試合中、ベンチからサインを送ることは一切ない。指示待ち人間にはなるな。自分たちで考え成長してほしい。そんな思いがあるからだ。

 五回、徳山が2死から仕掛けた重盗から流れが変わった。三塁走者を三本間に挟みながらかいくぐられ、本塁を突かれた。練習通りにプレーしていれば仕留められたはずなのに。「甘さが出た」。4点を失った。

 それでも、八回に同点に追いつく。敵失から生まれた好機を見逃さなかった。得点圏に走者が進むと、連打と犠飛で2点を返した。

 3時間を超える激闘に終止符が打たれたのは延長十回。勝ち越した後に逆転を許してしまった。

 土壇場での踏ん張りが足りなかったという反省はある。でも、悔いはない。どんな場面でも自分たちで考え、戦ったからだ。「本物の力がついたと思う。最後の夏に理想のチームがつくれました」。さわやかに額の汗をぬぐった。(三沢敦)