(17日、第106回全国高校野球選手権奈良大会2回戦 天理4―0畝傍) 春の奈良県予選で優勝した天理が、夏の初戦に勝利した。打線は11安打、エース麻田は8回3分の1を投げ、与四死球ゼロ、被安打2と実力を見せた。 そんな天理の部員たちを食で…

 (17日、第106回全国高校野球選手権奈良大会2回戦 天理4―0畝傍)

 春の奈良県予選で優勝した天理が、夏の初戦に勝利した。打線は11安打、エース麻田は8回3分の1を投げ、与四死球ゼロ、被安打2と実力を見せた。

 そんな天理の部員たちを食で支える栄養士がいる。

■米、朝80合、夜100合におののく

   □  ■

 天理は、60人を超える野球部員が「白球寮」で過ごしている。

 全員が1食で400グラム以上の白米を食べる。朝は計80合、夜は100合の米を炊かないと間に合わない。

 寮で栄養士を務める立道美沙季(28)が初めて厨房(ちゅうぼう)からこの景色をながめた時、「この量を食べきってしまうのか……」とおののいた。

 滋賀県で生まれ育ち、高校を卒業した後は、京都の専門学校に通って栄養士の資格を取った。そして、老人ホーム向けの配食サービス会社で働いた。

 そんなある日、専門学校時代の同級生とやりとりしていると、「大学生の寮で栄養士をしていると、学生と話せて楽しい」とのメッセージ。

 私も食べてくれる人の顔が見えるところで仕事してみたい。そう思って転職先を探し、たどり着いたのが白球寮だった。24歳の時だ。

 カロリーやカルシウム、たんぱく質の量を計算して朝晩の献立を組み立てる。2週間前までにメニューを決め、作り方や盛りつけを書いた手順書を作って厨房に掲示する。これを見ながら、10人の調理員とともに60人超の料理を作っていく。

■ご飯を盛りつける量をつぶさに観察

 激しい練習で食欲がなくなりがちの日の昼食は、うどんやそうめんに。それでも、豚肉や鶏肉を入れてたんぱく質が取れるようにする。

 不動の人気メニューはカレーだ。

 7キロの豚や鶏肉、3キロのジャガイモなどを大きな鍋で煮込む。辛さや水分の量を変えて、2種類つくることもある。

 主将の松本大和(3年)は「寮のカレーは、お肉がよく煮込んであって、具がたくさん入っている。辛さも日によって違うので飽きないし、練習後でもご飯がすすむ」と言いながら、大盛りの白ご飯をよそった。

 立道は、部員たちの食べるペースやご飯を盛りつける量をつぶさに観察する。「悩んでいる子は食べる量が減ることがよくあるけど、緊張している子は見ただけでは分かりにくい」。そこを見逃さないように気を配る。緊張すると胃もたれしやすくなるので、試合前は、油っこいものや辛いものは控えた献立にする。

 一番のやりがいは選手の体づくりに貢献できていると感じるときだ。

 毎月の体重測定で「体重が増えてきたんです」と部員から言われると、かなりうれしい。寮長を務める麻田悠介(3年)は「自分たちのことを考えて作ってくれる寮のご飯は、家の料理と似た感じがする」と話す。

 夏は立道にとっても戦いだ。「3年生にとっては最後の大会で、遅くまで頑張っている姿を見てきた。夏は食欲が落ちやすいからメニューを工夫して、食事で選手をサポートしたい」=敬称略(佐藤道隆)