パリ五輪の開幕が近づいている。4年に一度のスポーツの祭典とあって、さまざまな競技が注目されているが、サッカー女子日本代表にとっても、大きな意味を持つ大会だ。なでしこジャパンは、どのようにオリンピックに臨むべきか、サッカージャーナリスト後藤…

 パリ五輪の開幕が近づいている。4年に一度のスポーツの祭典とあって、さまざまな競技が注目されているが、サッカー女子日本代表にとっても、大きな意味を持つ大会だ。なでしこジャパンは、どのようにオリンピックに臨むべきか、サッカージャーナリスト後藤健生が考察する。

■中2日で試合なのに「登録選手18人」の異常

 間もなくパリ・オリンピックが開幕。32競技329種目にわたって、メダル争いが繰り広げられる。

 1964年に東京でオリンピックが開かれたときには、競技数は20競技だったから、この半世紀余りの間にオリンピックがいかに肥大化したかが分かる。

 IOC(国際オリンピック委員会)は人気拡大のために、次々と新種目を追加。一方で「肥大化」への批判をかわすために、参加選手数を増やさないようにしようと、サッカーの場合、中2日で試合をする日程なのに、登録選手数が18人に絞られるという、異常事態になっている。

 多くの競技の場合、オリンピックは最高の目標となる大会だ。

 世界選手権やワールドカップと名づけられた大会は多くの競技に存在するが、ほとんどの場合、それらよりもオリンピックのほうが格上の大会と見なされている。

 あるいは、いわゆるマイナー競技の場合、関係者以外から関心を持たれるのは4年に一度のオリンピックだけ。オリンピックで好成績をあげられるか否かが、その競技のその後4年間の命運を分ける場合もある。

「マイナー競技」とは、大変に失礼な言い方であることは承知のうえで申し上げたのだが、実はJリーグ発足以前のサッカーはそれに近い存在だった。

■最高の目標から「W杯参加の通過点」に

 1964年の東京大会では、人気の低い競技から入場券の販売が始まったのだが、サッカーはまず最初のグループに入っていた。その東京大会でアルゼンチンを破り、4年後のメキシコ大会で銅メダルを取って一時的にブームを引き起こしたものの、その後、代表チームが低迷するとともにサッカー人気は下火となり、日本サッカーリーグ(JSL)でも1万人の観客が集まることは稀。代表戦でもスタンドには閑古鳥が鳴いていた。

 そして、アジア予選を勝ち抜けなくなってしまったサッカーは、オリンピックにも6大会連続で出場できなかった。「4年に一度、注目を集める」。その貴重な機会も失われ、サッカー・ファンはオリンピック期間中は寂しさを感じて耐え続けなければならなかったのだ。

 時代は変わり、今ではサッカーは人気プロスポーツとなり、日本人選手の多くがヨーロッパのトップクラブで活躍。代表チームはワールドカップでノックアウト・ラウンドに進むことも珍しくなくなった。

 それに伴って、オリンピックでのサッカーの位置づけも大きく変わり、パリ・オリンピックにはオーバーエイジの選手は参加せず、23歳以下でも海外で活躍する選手の多くが招集されない(できない)時代となった。

 オリンピックが最高の大会と位置づけられる競技では、4年という時間をかけて準備を重ねて来た代表チームが最高の準備をして大会に臨むのだが、男子サッカーの場合、たまたま招集可能だった選手を18人集めたチームが参加するのだ。選手にとっても、オリンピックは最高の目標ではなく、将来のフル代表入り、ワールドカップ参加への通過点に過ぎない。

■世界のエリートがつどう「ミニ・W杯」

 しかし、女子サッカーの場合は様相が違う。

 オリンピックの女子サッカー競技はフル代表が参加する大会であり、FIFAのインターナショナルマッチ・カレンダーに含まれているから、各国協会はすべての選手を招集して最強チームを参加させることができる。

 女子サッカーも世界的に普及度を上げ、昨年、オーストラリアとニュージーランドで開催された第9回ワールドカップからは参加国数が32に拡大された。

 ただ、残念ながら、まだ女子の場合は上位と下位の実力差は大きく、グループリーグでは5点差以上の差がついた試合が7試合もあった。

 そうした状況を考えると、12か国しか参加できないオリンピックの女子サッカー競技は、世界のエリートのみを集めた「ミニ・ワールドカップ」的な大会なのだ。男子サッカー以上に、注目すべきではないだろうか。

 女子のワールドカップは奇数年に開かれる。そのため、女子の場合はワールドカップがあった翌年にオリンピックが行われることになる。

 ワールドカップの予選と本大会を終えると、すぐにオリンピック予選があって、本大会を迎える。代表チームにとってはまことに難しいスケジュールと言わざるを得ない。

 男子サッカーの場合、ワールドカップを終えて、すぐに新チームを作るというスケジュールが定着している。

 オリンピックはフル代表とは別の大会だが、ワールドカップの2年後にはEUROやコパ・アメリカがあるので、各国代表チームはそれを目標に新チームを作り、各大会が終了してから次のワールドカップに向かっていく。

 もっとも、アジアの場合、アジアカップがワールドカップの翌年(しかも、中東開催の場合は1月)に開かれるので(2023年大会は、中国が開催権を放棄したおかげで2024年1月開催となったが)、ワールドカップに参加するような強豪国にとっては難しいスケジュールになっている。

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