磨いた制球力で好救援　早実に惜敗も明大八王子・岡出は「楽しい夏」

　（16日、第106回全国高校野球選手権西東京大会3回戦　早稲田実6―4明大八王子=延長十回）

　4―4で迎えた十回表1死二、三塁。明大八王子のベンチにいた岡出泰生（3年）は、マウンドを託した上原和玖（わく）（2年）を祈るような気持ちで見ていた。「上原なら抑えてくれる」

　だが、早稲田実の三沢由和（ゆうと）（2年）の打球は中前へ。走者2人がかえり、これが決勝点になった。

　昨秋の都大会本大会、腰を痛め、ベンチ外に。球速を上げようと練習に取り組んだが、今春もベンチ外。チームに必要な選手になるためには何が必要なのか。考えた結果、磨いたのが制球力だった。

　「最後の夏の試合に出られなければ、これまでやってきた練習も全てパーになる」。そんな思いで、下半身を強化するため、必死に走り込んだ。

　努力が実を結び、高校生活最後となる夏の大会、岡出は背番号10をもらえた。

　3回戦屈指の好カードとされた、早稲田実とのこの日の試合。ベンチスタートだった岡出の出番は、すぐにきた。三回表、2点を先制され、なおも1死一、三塁のピンチ。椙原（すぎはら）貴文監督は岡出にマウンドに上がるよう伝えた。

　試合前、3番手投手として起用する可能性を伝えられていた。想定していたよりも早い登板だったが、ブルペンに入ると、いつも以上に狙った場所に球が入った。自信をもってマウンドに向かった。直球を中心に、変化球で緩急をつけながら後続の打者を抑え、試合の流れを引き戻した。

　チームは四回裏、逆転。岡出はその後も強打者相手に、直球で真っ向勝負。八回まで1失点に抑え、マウンドを上原に譲った。監督は「これまでで一番のピッチングだった」と評価した。

　その後追いつかれ、逆転負けとなったが、岡出は「楽しい夏だった」。練習の成果を発揮できた。それに、みんなの思いを背負って、マウンドに立てたから。＝スリーボンド八王子（西田有里）