(16日、第106回全国高校野球選手権岩手大会2回戦 水沢4―12大船渡 8回コールド) 6点を追う七回、暴投で1点をかえし、2死一塁。水沢の1番打者・高橋幸正選手(3年)が肩を回しながら打席に入った。「とにかく次に回す」。頭は冷静だった。…

(16日、第106回全国高校野球選手権岩手大会2回戦 水沢4―12大船渡 8回コールド)

 6点を追う七回、暴投で1点をかえし、2死一塁。水沢の1番打者・高橋幸正選手(3年)が肩を回しながら打席に入った。「とにかく次に回す」。頭は冷静だった。ボール球をしっかり見極め、捉えた5球目は二遊間に転がった。「何とか抜けてくれ」。中前打となり、一、二塁に。チームは勢いづき、さらに2点を加えた。

 昨夏も先輩に交じって出場したが、2回戦でサヨナラ負け。2試合計6打席、全て凡退した。「あの悔しさは忘れられない。この夏の勝ちにつなげる」。課題の打撃を磨くために、空き時間があればバットを振った。家では母にシャトルを投げてもらい、打ち続けた。

 その成果が出て、今夏は1番打者として活躍。この日も、一回に右越え打を放って先取点のホームを踏んだ。

 でも相手は一枚上手だった。逆転できないまま試合終了となった。

 「一喜一憂しないように」。粘り勝つために、試合中はいつも冷静でいることを心がけてきたが、相手の校歌を聞きながら涙があふれてきた。

 「最後までずっと楽しくて、時間がすごく短く感じた。後輩にはこの負けを、次の夏につなげてほしい」。夢は後輩に託した。(松尾葉奈)