(15日、第106回全国高校野球選手権宮城大会3回戦、仙台育英2―0東北) 2点差を追う九回、2死満塁。東北の畠山重汰主将(3年)は、ネクストバッターズサークルに向かった。目の前で打席に立っていたのは、布川碧選手(3年)。「布川なら、回し…

 (15日、第106回全国高校野球選手権宮城大会3回戦、仙台育英2―0東北)

 2点差を追う九回、2死満塁。東北の畠山重汰主将(3年)は、ネクストバッターズサークルに向かった。目の前で打席に立っていたのは、布川碧選手(3年)。「布川なら、回してくれる」――。

 だが、4球目。布川選手がはじき返した痛烈な打球を仙台育英の遊撃手、登藤海優史(みゅうじ)選手がダイビングキャッチし、試合終了。試合後、仙台育英の校歌を聞きながら、涙を流した。

 昨秋、東北は仙台育英に2度負け、春は仙台育英と当たる前に敗退。「何が何でも勝ちに行こう、気持ちで勝とう」とチームを鼓舞した。

 この日、仙台育英の先発は、最速151キロの右腕を誇るエースの山口廉王投手(3年)。バットを短く持つことでミートを心がけ、投手側の足を上げない「ノンステップ打法」で速球に対応する戦法で臨むとチームで決めた。

 だが、打線は抑え込まれ、2点差を追う苦しい展開が続いた。途中で3度、三塁まで走者を進める好機もあったが、あと1本が出なかった。

 それでも、選手たちは声を掛け合い、笑顔を絶やさなかった。「楽しもう」「いつも通り」。暗くならず、楽しむ姿勢を貫いた。「きょうの試合が今までで一番楽しかった。やり切りました」。涙の筋が残る顔で、そう言い切った。(岸めぐみ)