(15日、第106回全国高校野球選手権千葉大会3回戦、千葉敬愛2―6中央学院) 絶対に負けたくないライバルがいる。 千葉敬愛の葉山洋翔(ひろと)(3年)は最速144キロの左腕として、この夏警戒すべき投手として挙げる学校が少なくなかった。 …

 (15日、第106回全国高校野球選手権千葉大会3回戦、千葉敬愛2―6中央学院)

 絶対に負けたくないライバルがいる。

 千葉敬愛の葉山洋翔(ひろと)(3年)は最速144キロの左腕として、この夏警戒すべき投手として挙げる学校が少なくなかった。

 この日、好調な出だしだったが、三回裏に中央学院打線につかまった。プロ注目の二刀流、颯佐心汰(3年)に2点本塁打を浴びるなど3点を先制された。「1打席目に打ち取れたコースに投げたが、相手が一枚上手だった」

 ただ、葉山が「絶対に負けたくない」と闘志を燃やしていたのは、颯佐やその他の有力選手ではなかった。

 同じチームで4番を打つ森虎之介(3年)だ。

 「あいつが活躍したら、自分はそれ以上に活躍する」

 この思いは森も一緒だ。2人は中学時代に四街道リトルシニアでともにプレーし、誰よりも互いを意識する。森は「特に2人で励まし合う仲ではない」と断言する。この日の試合中も言葉を数回交わしただけだった。ただ、ライバルとして意識するのは、互いに実力を認めているからだ。

 6点を追う九回表1死一塁で森が打席に入った。葉山は「長打力もミート力もある。あいつ以上の打者はいない」とひそかに信じていた。しかし、結果はフルスイングの空振り三振。「初球を見逃した時は『こいつ、まじか』と思ったけど、最後は強振してて、あいつらしい」

 その後2点を返し、2死一、二塁で次は葉山に回ってきた。相手投手の暴投があり、二、三塁とさらに好機が広がった。このとき森は「打つのは俺の役目だった。でも、この打席だけは打ってくれ」と祈った。葉山は死球で出塁するも、あとが続かず、チームは力尽きた。

 試合後、葉山は「集大成が出せた」と話した。そして、大学でも野球を続ける意思を示した。

 「やっと(森と)戦える。どこに行くかわからないけど、対戦したら絶対に三振にとる」。森も「大学でもやろうと思っている。葉山には負けない」。

 「夏」は終わったが、ライバル関係は終わらないようだ。(杉江隼)