(15日、第106回全国高校野球選手権埼玉大会2回戦 鷲宮14―1杉戸農) 杉戸農の唯一の女子部員中山美羽(3年)は三塁側ベンチ横のボールパーソン席で試合の最後を見届けた。 野球を始めたのは小学3年のとき。三つ上の兄に、人数が足りないという…

(15日、第106回全国高校野球選手権埼玉大会2回戦 鷲宮14―1杉戸農)

 杉戸農の唯一の女子部員中山美羽(3年)は三塁側ベンチ横のボールパーソン席で試合の最後を見届けた。

 野球を始めたのは小学3年のとき。三つ上の兄に、人数が足りないという理由で野球の試合に誘われたのがきっかけだ。グローブをはめたこともなかったが、いきなり二塁手を任され、「意外と楽しかった」。中学時代は軟式野球で投手としても活躍した。

 ただ、高校では野球を続けるつもりはなかった。硬式でやれるか不安もあったという。それでも入学後、先生に練習会に誘われ、ノックを受けて気づいた。「やっぱり野球って楽しい」

 入部してからは、男子部員と同じメニューをこなしてきた。昨年の新チーム発足時は投手がおらず、練習試合では中山が投手を務めた。主将の山下基輝は「変化球も切れていて、試合を作ってくれた。チームになくてはならない存在」。栗林陽希監督は「実力的には、先発で上位打線を打たせたい選手」と評する。

 しかし、日本高野連の規定で、女子選手は公式戦に出場できない。今大会はボールパーソンとしてグラウンドに立った。試合中はファウルボールを集め、審判へ渡した。

 結果は8回コールド負け。「残念だったけど、近くで見たみんなの顔はいつもより生き生きしていた。感動しました」と中山。

 野球は続けないつもりだ。仲間たちと過ごした3年間を振り返り、「つらいこともあったけど、高校でも野球をやってよかった」と笑顔だった。(黒田壮吉)