(15日、第106回全国高校野球選手権埼玉大会2回戦 浦和4―0春日部東) 春日部東の背番号1をつけた福田遥大(3年)がマウンドに立ったのは、4点差をつけられたまま迎えた九回表2死だった。 先発の滝沢柊介(3年)は二回に満塁本塁打を浴びたが…

(15日、第106回全国高校野球選手権埼玉大会2回戦 浦和4―0春日部東)

 春日部東の背番号1をつけた福田遥大(3年)がマウンドに立ったのは、4点差をつけられたまま迎えた九回表2死だった。

 先発の滝沢柊介(3年)は二回に満塁本塁打を浴びたが、四回以降は無安打に抑えていた。九回から継投した杉田寛(3年)も、2人を凡退に打ち取った。

 「夏はお前だ。流れを持ってきてくれ」。日下部直哉監督は、そんな場面で福田を送り出した。

 フルカウントからの6球目。思い切り腕を振って投げた高めの直球で右飛に仕留めた。ベンチはこの日、一番沸いた。

 昨夏の大会、福田は2年生ながらほとんどの試合で先発。この年の公立校で唯一ベスト8に入ったチームの立役者でもあった。

 しかし、今年4月に肩を痛め、春の地区代表決定戦にも出られなかった。1カ月以上投げられない日が続き、焦る気持ちを抑えながら下半身の強化やランニングを黙々とこなした。そんな中でも滝沢や杉田とは、「夏は俺たちで勝とう」と声をかけ合ってきた。滝沢は「福田が後ろにいてくれるので、満塁ホームランを打たれた後も落ち着いて投げられた」と話す。

 九回裏、打線は2死満塁まで迫ったが、あと1本が出ずに負けた。日下部監督は「3人の継投が春日部東のベストの形。よく頑張った」と振り返った。

 福田には、卒業後も野球を続けたいという思いがある。日下部監督が最後の1死だけ登板させたのは、けが明けで無理をさせたくないという判断でもあった。福田は試合後、「もっと投げたかった」と悔しさをにじませた。そして「3人で投げられて幸せでした。この悔しさは、今後に生かします」と前を向いた。(山田みう)