(15日、第106回全国高校野球選手権愛知大会3回戦 豊橋中央3―2栄徳) 3点を追う六回1死、栄徳の主将谷口爽選手(3年)が打席に立った。 前の打席は、満塁の好機を三振でつぶした。今度こそ「絶対に塁に出たい」。思い切って振ったのは、高め…

 (15日、第106回全国高校野球選手権愛知大会3回戦 豊橋中央3―2栄徳)

 3点を追う六回1死、栄徳の主将谷口爽選手(3年)が打席に立った。

 前の打席は、満塁の好機を三振でつぶした。今度こそ「絶対に塁に出たい」。思い切って振ったのは、高めの直球。球が当たった瞬間、飛んだと思った。センター方向へ抜ける間に駆け抜け、三塁打。後続の犠飛で生還し、1点をかえした。

 走れなかった時期がある。2月中旬、練習中に左ひざの靱帯を損傷した。「どうすればいいんだ」。大会に間に合わないかもしれない。

 けがをしてから数日間、自宅では言葉を発することもできないほど落ち込んだ。見ていた父の勝信さん(44)は「これは、さすがにまずいなと」。父子で病院を何軒も回り、体を鍛える計画を立てた。歩くまでに2週間、走れるまでに1カ月半。できることから始めていった。レスリング経験者の勝信さんは「逆にフィジカルがよくなった」と思う。5月末、通常の練習に復帰した。

 鍛えた体でこの日、八回に放った左前安打は、1点差にまで相手を追いつめる流れを作った。

 試合後、谷口選手は両足でしっかりと立って言った。「大学に進学してから、(父には)恩返ししたい」(渡辺杏果)