エディーHCはリーチ・マイケルのロック起用など新たな手を打ったが、数的不利の中で結果に結びつかなかった(C)Getty Images 7月13日にラグビー日本代表(以下ジャパン)はジョージア代表とテストマッチを行い、23-25で敗れた。サマ…

エディーHCはリーチ・マイケルのロック起用など新たな手を打ったが、数的不利の中で結果に結びつかなかった(C)Getty Images

 7月13日にラグビー日本代表(以下ジャパン)はジョージア代表とテストマッチを行い、23-25で敗れた。サマーシーリーズの通算成績は1勝3敗と負け越しが決定。ジョージアとの通算対戦成績はジャパンの5勝2敗となった。

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 前週、ジャパンⅩⅤとしてマオリオールブラックスから歴史的勝利を挙げたジャパンは、その勢いそのままに序盤からスピーディーなプレーを継続した。試合開始のキックオフから攻め続けて2分で右WTBジョネ・ナイカブラがあっさりと先制トライを奪取。全ての選手の初動、相手ディフェンスに止められた後のリアクションが実に素早かった。個々の選手のフィジカルは強いけれど、チーム全体のスピードではやや劣ると見られていたジョージアを、このままジャパンが翻弄し続けて快勝という展開が浮かんだのだが、その予想は見事に覆された。

 ジョージアのHCリチャード・コッカリル氏は2021~22年の間、エディー・ジョーンズ体制下のイングランド代表チームでFWコーチを務めた人物であり、エディージャパンの手の内をよくわかっているとともに、エディー流の鍛錬法で選手のフィットネスを高めることにも成功していた。開始当初の先制パンチに全く怯むことなく、ジャパンにくらいつき、2本のPGを返して1点差に肉薄したのだ。

 そして、前半19分にはFLとして攻守に活躍していた下川が密集の中で「クロコダイルロック(密集に参加している相手の身体をワニが獲物を仕留める時のように大きくひねって引き剥がすこと。相手の身体に重大な怪我を生じさせるプレーとして厳罰が処されるようになった)」の反則を取られ、オフ・フィールド・レビュー判断付きのシンビンを科せられた。結果的にこのプレーが後に退場に相当すると判断され下川は退場となり、ジャパンは残り60分を14人で戦わなければならなくなった。

 さらにジャパンは、前半20分にラインアウトからモールでインゴール内になだれ込まれ、逆転を許した。昨年のW杯カップ以降、直近の国際試合に至るまで、ジャパンのラインアウトからのモールには精度の低下が見える。このトライもうまく力をそらされたとはいえ、手も足もでないといった状態で奪われてしまい、失点以上にジョージアの士気を大いに高める結果を招いてしまった。

 数的不利に立たされたジャパンは、無類の強さを誇るジョージアスクラムに対し、一人少ないスクラムでは力負けすることは明らかだったため、以降のスクラムは長田、ナイカブラの両WTBが交代でFLの位置に入ったが、その分BKの選手の負担が増え、選手たちには疲労の色がどんどん濃くなっていった。

 そんな中でも、後半24分の攻撃は見事だった。息をもつかせぬ連続攻撃から長田がインゴールに飛び込み再逆転に成功。しかし後半32分には途中出場のワクァが、度重なるオフサイドを咎められてシンビンを命じられる。この時点でジャパンは試合終了まで13人で戦わざるを得なくなり、それまで14人で戦ってきた疲労も加わって、細かいミスが次々と発生し、最後は守りきれずに再々逆転を喰らいそのまま逃げ切られた。

 前週の結果が素晴らしいものだっただけに、ファンのショックの大きさは計り知れないし、何より実際に戦った選手の落胆の大きさは察するに余りある。まずは、密集で反則を犯さない規律の徹底が急務だ。密集は戦闘状態そのものなので、冷静に的確なプレーを遂行するのは非常に難しいことではあるが、反則を犯さないファイトの仕方はいくらでもあるはず。そこを徹底的に追求してほしい。下川個人は今回の痛みを忘れず、ぜひ次の出場機会に活かしてほしい。彼が成長すればこの日の敗戦は意味あるものだったという位置付けに変わって行くはずだ。

 そして、ラインアウトからのモール。これは2015年以降ジャパンにとっては有力な決め手の一つだったが、まだ今回のチームにはその「遺産」が継承されるだけの熟成が進んでいないようだし、対戦チームの研究も進んでいるようだ。2027年に向けては新たなムーブメントの開発と、さらなる修練が求められるだろう。

 この日取り切った2本のトライは、これぞ「超速ラグビー」の真骨頂と言って良いものだった。ジャパンとしてはこの2本のトライを奪った時のような一連の攻撃機会を何度作れるかが勝負になる。次戦のイタリア戦では、呼吸を忘れるほどの連続攻撃を是非とも数多く魅せてほしい。この試合、負けは負けだが、決して後ろを向く必要はないし、そんな暇もない。

[文:江良与一]

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