(14日、第106回全国高校野球選手権岐阜大会2回戦、岐阜聖徳学園11―0中津川工) 六回2死走者なし。中津川工は追い詰められていた。スコアは0対11。このままではこのイニングでコールド負けだ。 ベンチ前で、林拓魅主将(3年)はゆっくりと…

 (14日、第106回全国高校野球選手権岐阜大会2回戦、岐阜聖徳学園11―0中津川工)

 六回2死走者なし。中津川工は追い詰められていた。スコアは0対11。このままではこのイニングでコールド負けだ。

 ベンチ前で、林拓魅主将(3年)はゆっくりと素振りをしていた。「絶対自分に回ってくる」

 期待通り、前打者の稲熊来斗選手(3年)が中前打で出塁。「初球から振り切る」との思いで打席へ。右方向に大きなファウルを放った後、冷静に四球を選んで好機を広げた。

 初回にチーム初安打を放った。劣勢の中でも声を出し続けて仲間たちを鼓舞し、笑みも見せた。スタンドから「いー笑顔やね、拓魅さん」と励ましのかけ声も飛んだ。「楽しくやりたいし、自分が暗くなるとチームも暗くなる。笑顔を見せて盛り上げたかった」

 主将として約30人の部員をまとめてきた。意見の食い違いも出た。声をかけても練習がだらけてしまうことも。「苦しい時もありました」

 柘植太郎監督は「主将として引っ張り、一番努力してきた選手。初安打も放った。努力が結果に結びついた」と評する。

 大敗したが、成果もあった。先頭に立って磨いてきた守備力だ。今大会でチームは2試合とも無失策。「点差は離れたけど、自分たちらしく守備から入り、最後も2死から走者を出して攻めることができました」

 軽く笑みを見せて球場を後にした。(高原敦)