第106回全国高校野球選手権北北海道大会(朝日新聞社、北海道高野連主催)の熱戦が旭川スタルヒン球場で繰り広げられている。プロ野球初の300勝投手ビクトル・スタルヒン(1916~57)の名を冠した球場は、開場40年を迎えた。正面入り口前に立…

 第106回全国高校野球選手権北北海道大会(朝日新聞社、北海道高野連主催)の熱戦が旭川スタルヒン球場で繰り広げられている。プロ野球初の300勝投手ビクトル・スタルヒン(1916~57)の名を冠した球場は、開場40年を迎えた。正面入り口前に立つスタルヒン像にまつわる「言い伝え」は本当なのか。

 それは、大きく振りかぶる等身大のスタルヒン像が、函館オーシャン球場でミットを構える久慈次郎像と対峙(たいじ)しているという話だ。戦前の日米野球で全日本チームのバッテリーとして活躍した2人だけに、もっともらしい話だ。

 ところが、スタルヒン像は久慈像に背を向けるように、北を向いている。スタルヒン球場を訪れ、銅像を記念撮影をする人の中には「あれ、どっちが南だっけ?」と首をかしげる人もいる。

 久慈像はスタルヒン像より2年早い1977年、当時の千代台公園野球場の屋外で、バックネット裏の応援席そばに建てられた。94年に函館オーシャン球場に改修された際、球場外の緑地に移設されたが、いずれもミットはほぼ北に向けて構えていた。

 ではスタルヒン像は――。建てられたのは79年10月。母校の旧制旭川中(現旭川東高校)の卒業生らが中心となり、現在のスタルヒン球場から少し離れた市総合体育館の正面入り口前の緑地に建てた。同体育館のオープン3日前だった。

 この時の様子を伝える地元雑誌などをひもとくと、除幕式にはスタルヒン氏の長女や孫娘が駆けつけ、銅像と写真に納まっている。このときのスタルヒン像の向きは確かに南、「言い伝え」は本当だった。この後、スタルヒン球場の開場に合わせて現在の場所に移設された。

 当初、スタルヒン像を久慈像に向けたのは意図的か、偶然かは、関係者の高齢化などで調べられなかったが、ともに野球殿堂入りを果たし、日本の野球史に名を刻んだ2人の名選手が、銅像として北と南の球場に鎮座しているだけでも十分なのかもしれない。

 昨夏の準決勝、決勝は、開業初年度だったエスコンフィールド北海道で開かれた。今年は従来通り、この球場から甲子園へ代表校を送り出す。

 2年前、甲子園初出場をかけ、決勝で涙をのんだスタルヒン氏の母校・旭川東は、15日の1回戦に登場する。(奈良山雅俊)