(14日、第106回全国高校野球選手権石川大会2回戦、日本航空石川10―0能登) グラウンドの外野付近に建てられた仮設寮。能登の山上晃汰選手(3年)は、練習中に時々打球が飛んでくるここから学校に通い、今大会に臨んだ。 母親が料理をするとこ…

 (14日、第106回全国高校野球選手権石川大会2回戦、日本航空石川10―0能登)

 グラウンドの外野付近に建てられた仮設寮。能登の山上晃汰選手(3年)は、練習中に時々打球が飛んでくるここから学校に通い、今大会に臨んだ。

 母親が料理をするところをじっとみつめる子どもだった。料理人になりたくて、水産や農業を学べる能登を進学先に選び、金沢の家族と離れて能登町内の寮に入った。

 ただ元日の地震で寮が被災。帰省していた実家から戻れなくなった。料理人への道も、仲間との野球も諦めたくなかった。仮設の寮が完成すると5月に入居し、練習に励んできた。

 迎えた初戦。今春の選抜大会出場校相手に先頭打者として初回に四球で出塁すると、竹下仁平主将(3年)の安打で得点圏に。仲間とつくった好機が「うれしかった」。拳を高く突き上げた。

 五回、10点差がついても気持ちは強いままだった。竹下選手がマウンドに上がり、山上選手も中堅から全力で声を出し、この試合初めて1回を無失点で切り抜けた。その裏に2死で回ってきた打席。力いっぱいスイングしたが、及ばなかった。

 山上選手は涙を流しながら「最後まで楽しくできてよかった」と話す。料理人になる夢を追いかける。「これから、また勉強します」(小崎瑶太)