岩手大会1回戦を突破した金ケ崎は、選手の半分にあたる5人が強豪の花巻東のユニホームを着ていた。部員不足の高校が近隣校から部員を借りる「単独廃校ルール」を活用したのだ。 本来の金ケ崎の選手は5人。連合チームを組む相手が見つからず、大会出場が…

 岩手大会1回戦を突破した金ケ崎は、選手の半分にあたる5人が強豪の花巻東のユニホームを着ていた。部員不足の高校が近隣校から部員を借りる「単独廃校ルール」を活用したのだ。

 本来の金ケ崎の選手は5人。連合チームを組む相手が見つからず、大会出場が危ぶまれていた。5月下旬、県高校野球連盟を通じて協力してくれる高校を探したところ、部員100人以上の花巻東が快諾した。

 「えっ花巻東?」。金ケ崎の主将、三浦拓己は当初驚いた。ただ、ともに練習試合を戦う中、一つひとつのプレーの意識の高さに感銘を受けた。「打者ごとに守る位置を変えるとか、細かいことを徹底している。勝つことを見据えて練習するようになった」

 千葉和馬監督には、部員5人が抜けることで花巻東のチームの一体感に影響するのでは、という申し訳なさもあった。「私たちにとってはプラスでしかないけれど……」

 そんな思いをよそに、先発投手として好投した高橋朔太郎(花巻東、2年)は言った。「人数が少ない分、試合に出ながらバット引きやランナーコーチもやらなきゃいけない。花巻東ではできない経験ができている」

 花巻東の選手から「打球が見やすい」とサングラスを貸してもらってプレーした三浦はうれしそうに言う。「花巻東って『甲子園にある高校』みたいな遠いイメージだった。話してみたら、同じ高校生でした」

 「岩手から日本一」を掲げる花巻東と、大会に出られるかどうかも分からなかった金ケ崎。互いに普段と違う経験に目を輝かせる、意義ある交流だと思った。=きたぎん(大宮慎次朗)