(14日、第106回全国高校野球選手権南北海道大会準々決勝 札幌大谷1-11札幌日大) 五回1死満塁、打たれればコールド負けが決まる。札幌大谷のエース菊地大一投手(3年)は得意の直球に望みをかけた。だが球は捕手のミットに収まることなく、中…

 (14日、第106回全国高校野球選手権南北海道大会準々決勝 札幌大谷1-11札幌日大)

 五回1死満塁、打たれればコールド負けが決まる。札幌大谷のエース菊地大一投手(3年)は得意の直球に望みをかけた。だが球は捕手のミットに収まることなく、中前まで運ばれた。振り返って打球を見届けるとグラブで顔を覆った。

 出身は北海道の南西に位置する奥尻島。2人の兄と同じように知内で甲子園をめざすつもりだった。だが、札幌大谷から熱い誘いを受け、より厳しい道を選んだ。その先にプロ入りの夢もあった。

 中高一貫校の野球部に高校からとけ込むのは容易ではなかった。初対面の人に話しかけるのは大の苦手。「でも自分から声をかけないとこの先の成長はない」。覚悟を決めて同級生や先輩、指導者にも積極的に声をかけた。親元を離れての寮生活にも最初はとまどったが、主将に選ばれるほど成長した。結果を出すたびに周囲から認められ、背番号1をつかんだ。

 最後の大会はアップに専念できるようにとの五十嵐大監督の計らいで、攻撃の要、増田智紀が主将を背負った。だが思いは変わらず、ベンチを外れた仲間の分まで思いを背負って戦った。

 最後の1球は、自信のあるまっすぐを後悔なく投げた。「甲子園はダメだったがプロ野球選手という次のステージに向かっていきたい」(鈴木優香)