(14日、第106回全国高校野球選手権東東京大会3回戦 八丈1―14明大中野 五回コールド) 八丈の中沢廉太郎(3年)は東京都目黒区出身。中学3年のとき、「島留学生」のチラシをもらったことが、人生を大きく変える。 当時はまだコロナ禍。閉塞…

 (14日、第106回全国高校野球選手権東東京大会3回戦 八丈1―14明大中野 五回コールド)

 八丈の中沢廉太郎(3年)は東京都目黒区出身。中学3年のとき、「島留学生」のチラシをもらったことが、人生を大きく変える。

 当時はまだコロナ禍。閉塞(へいそく)感が漂う都会よりも、自然豊かな八丈島で送る高校生活に魅力を感じた。両親に頼み込み、単身で島へ渡った。

 未経験だったが、野球部に入った。バットに球が当たらず、試合では控えばかり。でも、島の球場から見える海の景色に心が癒やされた。くじけそうになると、OBやチームメートが支えてくれた。主将の奥山類(3年)は言う。「廉太郎はムードメーカーとしてチームに欠かせない存在なんです」

 迎えた最後の夏。一塁コーチとして、仲間を鼓舞した。明大中野と対戦したこの日は伝令役もつとめ、一発ギャグでチームを和ませた。

 五回、代打で打席に立った。3年間のすべてを込めた豪快なスイング。コールド負けだったけれど、三振だったけれど、島での思い出の数々が脳裏を駆け巡った。

 「八丈に来たから野球を始めたし、仲間や監督がいてくれたから続けられた。もう、思い出になっちゃうのか」。試合後の表情には、悔しさとやりきった思い、そして寂しさがまじり合っていた。=神宮(佐野楓)