エアコンを導入せず、床下冷房を利用するパリ五輪の選手村。(C)Getty Images 開幕まで約2週間を切った五輪に向け、開催地となるパリ市内でも機運が高まっている。そうしたなかで、小さくない話題を集めているのが、出場207か国の…

エアコンを導入せず、床下冷房を利用するパリ五輪の選手村。(C)Getty Images

 開幕まで約2週間を切った五輪に向け、開催地となるパリ市内でも機運が高まっている。そうしたなかで、小さくない話題を集めているのが、出場207か国のアスリートやスタッフが一堂に会する選手村だ。

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 82棟約7200室が配備された今回の選手村において、最大のトピックとなっているのは、各室にエアコンが設置されていない点だ。招致時から「歴史上で最も環境にやさしい大会にする」と掲げた大会の革新的なアイデアのひとつになっている。

 ただ、近年のパリは異様な熱波により気温が35度を超える日もある。大会組織委員会は、地下水を利用した床下冷房を採用し、選手たちの健康を保つプランを打ち出しているが、状況を不安視する先進国を中心とした複数の代表団からはエアコンの導入を求める意見が殺到。すでに2500台の移動式エアコンを注文していることが分かっている。

 温室効果ガス排出の削減に貢献しようというパリ五輪の計画に”穴”がある感は否めない。しかし一方で、エアコンを導入せずに大会を迎えようという国もある。トリニダード・トバゴのオリンピック委員会のダイアン・ヘンダーソン会長は、地元紙『Trinidad Express』で、「もし、パリで選手たちが何かを必要とすれば、対応しなければならない。我々はそのことも承知している」と言及。あくまで”現場”で起きた状況に対処すると強調し、こう続けている。

「どんな国であろうと我々は常に対処してきた。例えば、極寒だったペルーのリマでは、ヒーターやヘッドウェア、そして手袋を買いに行かなければならなかった。だから、今回もそういった時と変わらない。スタッフたちと協力をして対処する」

 また、経済的な成長でも注目される大国インドも現状のまま大会に臨む。地元紙『Hindustan Times』の取材に応じた同代表の主任医官であるディンショー・パルディワラ博士はエアコンの導入を検討した事実を明かした上で、「(エアコンが)なくても大きな問題にはならないだろう」と見解を示している。

「もちろん、エアコンの不備は世界的な懸念事項です。多くの選手団が、選手たちの慣れ親しんでいる宿泊方法ではないと感じていて、私たちも可能な限りエアコンがある状況は望んでいます。ただ、我々が話を聞いた選手たちの多くは、意外にも、今の状況をそれほど心配していなかった。気温の問題に大きな懸念を抱いている選手が少なかったんです。彼らの多くは、『私たちはそれに慣れているし、自分たちはいつもエアコンの中にいるわけではない』と言っていた」

 もっとも、パルディワラ博士は「2週間後に熱波が来た場合に備え、緊急策を講じるかどうかは検討中です」とも告白。突然の気候変動に対応する計画があることも明かしている。

 想定される酷暑の中で、最高のパフォーマンスをいかに出すか。各国のプランは実に興味深いものになりそうだ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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