(13日、第106回全国高校野球選手権埼玉大会2回戦 花咲徳栄14―1越谷東) 越谷東の主将土橋真翔(3年)は緊張していた。優勝候補の花咲徳栄を相手に0―5で迎えた三回、1死一塁。羽賀優馬(3年)がチーム初安打で出塁した直後の打席だった。 …

(13日、第106回全国高校野球選手権埼玉大会2回戦 花咲徳栄14―1越谷東)

 越谷東の主将土橋真翔(3年)は緊張していた。優勝候補の花咲徳栄を相手に0―5で迎えた三回、1死一塁。羽賀優馬(3年)がチーム初安打で出塁した直後の打席だった。

 バントを試みたが2度ファウルになった。「つながなければないという思いで、頭がいっぱいになっていた」

 ベンチを振り返ると、チームメートの笑顔が見えた。斎藤繁監督からはエンドランのサイン。弱気な自分に気がつき、踏ん切りをつけた。

 「思い切りやるしかない」。ファウルで6球粘った後の直球をたたき、打球は右前に。一塁上で「よっしゃ!」と拳を突き上げ、二塁上の羽賀と顔を見合わせた。その後、相手のミスや犠飛で羽賀が生還し、この日唯一の得点につながった。

 167センチ84キロの体格で、チームの「愛されキャラ」。昨年に新チームになった直後の練習中、右足首の靱帯(じんたい)を痛め、松葉杖の生活になった。それでも「プレーはできなくても、チームのために全力を尽くす」と一番早く朝練習に来て、誰よりも笑顔で声を出した。羽賀は土橋について「チームがたるんだ空気になった時は厳しい言葉もかけて鼓舞してくれる、頼もしいキャプテン」と話す。

 花咲徳栄戦が決まってからは、苦しい展開になっても気持ちだけは負けたくないと「どんな場面でも笑顔を忘れないこと」をチームの約束事にした。この日はピンチの場面でも、仲間に「楽しんでいこう」「笑顔で!」と声をかけ続けた。

 試合はコールド負けしたが、土橋は涙を見せなかった。「最後まで笑顔を忘れずやりきれた。一生の思い出になりました」と笑った。(山田みう)