(13日、第106回全国高校野球選手権埼玉大会2回戦 熊谷商0―1武蔵越生) 0―0で延長タイブレークに突入した十回裏。先頭の1番打者にヒットを打たれて無死満塁のピンチでも、熊谷商のエース中村謙吾(3年)は強気だった。165球を投げていたが…

(13日、第106回全国高校野球選手権埼玉大会2回戦 熊谷商0―1武蔵越生)

 0―0で延長タイブレークに突入した十回裏。先頭の1番打者にヒットを打たれて無死満塁のピンチでも、熊谷商のエース中村謙吾(3年)は強気だった。165球を投げていたが、疲れは感じていなかった。伸びのある直球を主体に10三振を奪い、「ここまでは完璧に近い投球だった」。

 次の2番を2球で追い込むと、3球目は浅いセンターフライに打ち取った。タッチアップした三塁走者も本塁で刺し、いったんは流れを断ったかに見えた。

 しかし、3番に四球を与えてしまう。次の代打の打者に粘られ、フルカウントからの8球目。渾身(こんしん)の一球は「絶対に打たれない自信があった」。外角低めの直球を、右中間へ運ばれた。球を追う外野手を見ながら「自分のせいで終わるのか」と目の前が暗くなった。

 春の県大会で8強に入り、シード校で臨んだ大会の初戦だった。新井茂監督は「よく投げた」とねぎらったが、中村は試合後、「主将として、エースとして、本当に自分がふがいないです」と泣き崩れた。「こんなに簡単に、チームが解散になるなんて……」と涙が止まらなかった。(山田みう)