開会式の始まりと終わりに合わせたかのように、雨はやんだ。13日開幕した愛媛大会。薄曇りの空の下、行進する球児たちの声が、グラウンドにこだました。  30分ほど前に雨が上がった午前11時、坊っちゃんスタジアム。松山北野球部3年の井爪凜さんの…

 開会式の始まりと終わりに合わせたかのように、雨はやんだ。13日開幕した愛媛大会。薄曇りの空の下、行進する球児たちの声が、グラウンドにこだました。

 30分ほど前に雨が上がった午前11時、坊っちゃんスタジアム。松山北野球部3年の井爪凜さんの先導で、前回優勝の川之江を先頭に54校47チームの選手たちが東のチームから入場してきた。宇和は体調不良者対応のため、参加を見合わせた。

 田中圭・愛媛県高校野球連盟会長はあいさつで「甲子園への道のりは高い壁が立ちはだかることでしょう。チームの仲間と厳しい練習を耐え抜いてきた自信を胸に、持てる力を最大限に発揮して大いに挑んでください。この夏が『チャレンジの夏』になることを祈念します」とエールを送った。

 広島敦史・朝日新聞松山総局長は「先日来の大雨で、県内でも被害が出ました。野球ができる日常のありがたさを忘れず、全力でプレーしてください」と話した。

 式が終わると再び雨に。開幕戦の土居・西条農―大洲は中止、14日の坊っちゃんスタジアム第3試合に順延となった。(中川壮)

■新居浜工・合田主将が宣誓

 「私たちは今、野球ができることに幸せを感じています」

 ハキハキとした大きな声で、新居浜工の合田陸主将が選手宣誓の言葉をグラウンドに響かせた。伝えたかったのは「3年間で一番大事にしてきたこと」という周囲への感謝だった。

 宣誓の内容は、まずは自分で考え、監督と相談した上で、国語の先生にも文章づくりを手伝ってもらった。

 最もこだわったフレーズは「支え合った仲間たち、励まし見守ってくれた家族や指導者、応援してくださるすべての方々に感謝の気持ちを込めて」という一節だ。

 大役を終え、「練習より緊張で速くなってしまったけど、かまずにしっかり言えた。自己採点するなら80点ぐらい」と安堵(あんど)の笑みをこぼした。初戦に向けて「強い相手でも自分たちができることをやって、一つ一つのアウトを丁寧に取っていきたい」と意気込んだ。(川村貴大)

■国歌独唱は今治東中等・寺田さん

 「千代に八千代に」。球場を覆った厚い雨雲を突き抜けるかのように、伸びやかなメゾソプラノが響き渡った。

 開会式で国歌を独唱した今治東中等教育学校6年の寺田天音(てらたあまね)さん(17)はアクターズスクールに通い、小学5年時からミュージカルなどに出演。主役を含む数多くの舞台を経験している。

 だがこの日は「とても緊張して手が震えた」と言う。「気持ちよく歌い終えることができました。ほっとしています」

 来年は大阪の大学に進学、さらにミュージカルの学びを深める。

 目標は愛媛県出身の俳優で、ディズニーのアニメ映画「ポカホンタス」で主役の声を吹き替えた土居裕子さんだ。昨年コンサートで協演の機会があり、「エネルギーあふれる歌と優しい人柄に引かれた」という。

 ふだんの舞台は「お客さんとコミュニケーションを取りながら、一つの温かい空間をつくる」ように心がけている。

 自ら志願した球場での歌唱で勝手が違ったのは、外野センター奥の国旗掲揚台に正対し、観客に背を向けて歌うことだった。それでも「後ろにお客さんがたくさんいることを感じ、パワーをもらいながら歌いました」という。「高校最後の年にこんな機会をいただけて感謝しています」(戸田拓)