(13日、第106回全国高校野球選手権西東京大会、3回戦 多摩大聖ケ丘1―9東海大菅生 七回コールド) 絶対やってやる。成長した姿をみんなに見せるために。第1シードの東海大菅生相手に6点差で迎えた五回表1死。代打に送り出された多摩大聖ケ丘の…

(13日、第106回全国高校野球選手権西東京大会、3回戦 多摩大聖ケ丘1―9東海大菅生 七回コールド)

 絶対やってやる。成長した姿をみんなに見せるために。第1シードの東海大菅生相手に6点差で迎えた五回表1死。代打に送り出された多摩大聖ケ丘の田中琥汰(こうた)(3年)は意気込んだ。

 ツーストライクからの3球目、真ん中に来た直球を思いっきり振り抜いた。打球は左翼へ伸び、この試合、チーム初の長打となる二塁打に。田中は拳を突き上げた。その後三盗も決め、ベンチが勢いづいた。

 田中は1年生の11月に入部した中途組だ。野球経験はなかったが、放課後、キャッチボールで遊んでいた帰宅部仲間の友人、松本完爾(かんじ)(3年)と「楽しそう」という理由で入った。

 野球部も部員を求めていた。当時、部員は8人で大会は助っ人を得て単独出場していた。田中たちの入部で、部員だけで単独出場できるようになった。

 田中はどんな練習も新鮮で、楽しくてしかたがなかった。初めは「続かないだろうな」と思っていた本村哲郎監督も驚くほど、熱心だった。

 チームの空気も変わり始めた。上級生はつきっきりで、田中に守備や打撃を教えてくれた。同級生もたくさんアドバイスをくれた。田中の熱心さは他の選手にうつり、チームの士気はみるみる上がっていった。

 最後の大会、田中は仲間や先輩に恩返ししたかった。来る日も来る日もバットを振り、スタメンを目指した。

 13日の試合、田中はスタメンではなかったが、代打で空気を変える一打を放った。「入部したときのように、チームの流れを変えて欲しい」という監督の思いに応えた。

 田中は仲間からの「よく打ったね」の一言がうれしかった。成長した姿、見せられたかな。敗れたが、涙はなかった。=スリーボンド八王子(西田有里)