(13日、第106回全国高校野球選手権佐賀大会2回戦 鳥栖商3―5白石) 「生徒会長をやってみないか」。鳥栖商の緒方里咲(りさ)マネジャー(3年)が尾崎将成副部長から声をかけられたのは、昨秋のことだ。「物おじしないし、学校を引っ張っていけ…

 (13日、第106回全国高校野球選手権佐賀大会2回戦 鳥栖商3―5白石)

 「生徒会長をやってみないか」。鳥栖商の緒方里咲(りさ)マネジャー(3年)が尾崎将成副部長から声をかけられたのは、昨秋のことだ。「物おじしないし、学校を引っ張っていける」とみた副部長が立候補をはたらきかけた。

 周囲の評価と違い、実は緊張するタイプ。3分間の「立候補演説」は覚えたはずの文面が出てこず、アドリブで何とか乗り切った。新チームの試合直後で、同期の宮原百菜マネジャーの応援演説は、枯れた声で聞き取りにくかった。「ダメだったね」。2人で笑い合ったが、3人の候補者から当選を果たした。

 野球部は原則、月曜日が練習休みだが、そこに生徒会活動が入った。正直、「やめたい」と思ったこともある。春、卒業式の送辞には野球部の先輩への思いも盛り込み読んだ。いろんな交渉や話し合いをこなし、場慣れしていった。他校の野球部長の先生と話すのも苦にならない。

 野球部にあこがれていた。10歳ほど離れた2人の兄が鳥栖工の選手だった。小学生のころ、遊び感覚で応援に行った記憶がある。「家での兄はぐったりしていた印象」だったが、輝く選手を応援したい思いがあった。中学では陸上部だったが、鳥栖商で野球部マネジャーになった。

 スコアブックを付けられるようになり、野球もわかってきた。情報管理科で学び、選手の体調や球速などの記録管理も担当してきた。

 この日は宮原マネジャーが記録員としてベンチ入りした。「(勝てば)次は、私だから」。声をかけた選手たちもわかっていた。五回に追いついた。後半勝負で、あと1本出なかった。

 試合後、球場外で最後のミーティングが始まった。選手6人と女子マネジャー4人の3年生の中で緒方マネジャーが真っ先に言った。「何もわからず入ったけど、2年半でこんな仲間に出会えて幸せ者でした」。平川将太郎監督が返した。「気を配れる生徒会長になり、野球部にも学校にもなくてはならない存在だった。野球部代表として(生徒会長を秋まで)もうひと踏ん張りしてください」(森田博志)