(13日、第106回全国高校野球選手権奈良大会2回戦 奈良8―1宇陀) 宇陀の塚本泰史主将(3年)が一回表、四球を選んでチームで初めて出塁すると、待ち構えていた一塁コーチの安村豊(3年)は「チャンスだから、集中していこう」と声をかけた。 …

 (13日、第106回全国高校野球選手権奈良大会2回戦 奈良8―1宇陀)

 宇陀の塚本泰史主将(3年)が一回表、四球を選んでチームで初めて出塁すると、待ち構えていた一塁コーチの安村豊(3年)は「チャンスだから、集中していこう」と声をかけた。

 宇陀で3年生はこの2人だけ。中学校も同じで、練習後はよく最寄り駅まで一緒に帰った。

 「今日の打撃練習、全然打てんかったな」。練習の反省点や対戦相手の分析など、野球の話は尽きなかった。

 2022年4月、奈良県立高校の榛生昇陽と大宇陀が統合し、宇陀が開校。昨年までは榛生昇陽と合同チームだったが、今年は宇陀として初めて単独での出場。榛生昇陽の先輩たちの分も頑張ろうと、2人は気合を入れていた。

 夏のメンバーが発表された6月末、安村は背番号「10」を告げられた。

 「試合で出してもらえるかな」。悩む安村に、「そんなにへこまんで。打つチャンスがあるかも」と塚本。安村は励ましてもらううちに、「ベンチからでもチームを盛り上げて貢献しよう」と気持ちを切り替えた。

 この日、塚本は主将として何度も大きな声でチームを鼓舞した。安村も負けじと声を出した。

 そして七回表1死、代打で安村が打席に入った。だが結果は三振。「せっかく出してもらったのに、振れなかった……」と悔しさをにじませた。

 試合後、安村は「塚本がチームを引っ張る姿を見て、自分も頑張ろうと思った」と感謝の言葉を口にした。

 塚本も「自分が主将としてしんどかった時も、チームを和ませてくれた安村に助けられた。6年間一緒にやってくれてありがとうと伝えたい」と、しみじみと語った。(佐藤道隆)