(13日、第106回全国高校野球選手権神奈川大会3回戦 横浜創学館6―5横浜清陵) 「鶏肉のトマトクリーム煮です。タマネギとシメジ入り。ご飯がすすめばいいんですけど」 6月下旬、横浜清陵のグラウンドで、中田悠太さん(3年)が汗だくの顔に大き…

(13日、第106回全国高校野球選手権神奈川大会3回戦 横浜創学館6―5横浜清陵)

 「鶏肉のトマトクリーム煮です。タマネギとシメジ入り。ご飯がすすめばいいんですけど」

 6月下旬、横浜清陵のグラウンドで、中田悠太さん(3年)が汗だくの顔に大きな笑みを浮かべ、かすかに湯気がたちのぼる鍋を抱えていた。隠し味はニンニクだという。

 少し前に監督から選手引退を告げられていた。3年生全員で話し合い、甲子園で勝つためのメンバーを選んでほしいと要望した結果だった。「もうちょっと選手でいたかったけど、実力が足りないのは分かっていました」。悔しかったが、やりきった自負はあった。

 背番号はなくともチームに貢献したいという思いから、補食係を申し出た。メニューを考え、放課後ダッシュで坂の下の店に材料を買いに行く。その後は家庭科室にこもり、心を込めて料理を作る。あっという間に空になる鍋と、部員らの「おいしい」が何より励みになった。「将来の夢は管理栄養士なんです」

 スタンドで試合の行方を見届け、敗戦に涙をぬぐった。「互角だったから悔しい。仲間は頑張った」(手代木慶)