慶大に敗れた選手たちに語りかける加藤尋久新監督。(撮影/松本かおり) 初陣は厳しい結果になった。 4月24日に開幕した関東大学春季大会が5月1日にもおこなわれ、青山学院大学と慶應義塾大学が対戦した(青学大G)。ホームチームにとっては新監督…
慶大に敗れた選手たちに語りかける加藤尋久新監督。(撮影/松本かおり)
初陣は厳しい結果になった。
4月24日に開幕した関東大学春季大会が5月1日にもおこなわれ、青山学院大学と慶應義塾大学が対戦した(青学大G)。ホームチームにとっては新監督を迎えての初戦。多くのOBが見守る状況になんとしても勝ちたい試合だったが、17-59の完敗だった。
昨季終了後に今シーズンからの指揮を執る新監督を、公募の形で探していた青学大。そこに手を挙げ、大役を任されたのが加藤尋久監督だ。現役時代は熊谷工、明大、神戸製鋼でSO、CTBで活躍し、日本代表にも選出。指導者になってからは、セブンズ日本代表でコーチを務めたほか、セコム、清水建設、明大、東海大でチームを成長させ、昨季まで日大のヘッドコーチを務めていた。青学大はその豊富な経験と、こだわりのある指導方法に期待を寄せている。
4月10日におこなわれた東日本大学セブンズでは、コンソレーションながらチームは優勝。新監督のいくつかのアドバイスは的確で、それを実践して勝利をつかんだ選手たちは、指揮官の引き出しの多さにはやくも刺激を受けた。
しかし、15人制での初陣は完敗に終わった。接点の激しさで受けに回ってしまい、攻守に勢いを出せなかったからだ。イメージしていたボールを動かすスタイルも、短い時間帯しか実現できなかった。
この1か月、加藤監督は全選手の顔と名前を一致させること、選手一人ひとりを知る作業を重ねてきた。
「学生たちにとっても、そういう時間だったのではないでしょうか。お互いを知ることから始めないと。話したり、練習中の態度を見たり、いろんなメニューをやってみて、それらへの対応を見て一人ひとりを理解し、性格を知ることができました」
だから、この日の試合へ向けての準備は、僅かな時間だけだった。
「学生たちには、みんなの本気が見たい、と伝えていました」
完敗の試合後も選手たちに、「やろうとしたことはやれた? やれなかった?」と穏やかに話しかけた。選手たちの表情を見ながら言葉を続け、「試合が終わったいまから、次へのスタートを切ってください」。リーダーのひとりであるSO岩満亮は、「いろんなことを知っていている方で、多くのことを吸収できる。練習中、中途半端なミスをすると厳しく注意してくれる。これまでの青学に欠けていたこと」と話し、チームに変化が起きつつあることを認めた。
3シーズン連続で関東大学対抗戦Aの6位(2013年度は明大ともに3勝4敗も当該校同士の対戦結果により6位扱い)で、下位リーグとの入替戦は回避しているものの、大学選手権への出場も逃している状態。そんな状況から、なんとか抜け出したいと思っている。岩満は「目標は早稲田に勝つこと。あちらも新体制ですし、青学はこれまで一度も早稲田には勝ったことがないので、歴史を変えたい」。そのターゲットを実現することが、大学選手権への出場権獲得、ライバル校からの勝利にもつながると信じている。
加藤監督が言う。
「文化を知ることから始めて、『ああしろ、こうしろ』と言うのは、青学のカルチャーではないと感じました。だから、個々が考えるチームになってほしい。明るさは、このクラブの長所です。ただ、明るいのは自分たちにとっていい時間のときだけだから、プレッシャーを受けると喋れなくなる。それでは、ノリでやっているだけに過ぎません。どんなときでも、自分たちの良さを出せるチームにしたいですね」
他大学出身の自分が入ったことで、「外の人たちが青学大をどういう目で見ているかも関係者に知ってもらえると思う」と話す新指揮官は、日常を変えないと結果は残らないと言い切る。
厳しさとこだわりに定評のある指導法が、歴史あるチームを大学選手権の常連へと引き上げられるか注目される。