2021年東京オリンピック(五輪)の野球開幕戦で始球式を担ったバッテリーが、高校最後の夏、同じ場所で初戦をたたかう。3年の時を経て、14日の「運命の一戦」に臨む。 第106回全国高校野球選手権福島大会に出場する相馬のエース宝佑真投手(3年…

 2021年東京オリンピック(五輪)の野球開幕戦で始球式を担ったバッテリーが、高校最後の夏、同じ場所で初戦をたたかう。3年の時を経て、14日の「運命の一戦」に臨む。

 第106回全国高校野球選手権福島大会に出場する相馬のエース宝佑真投手(3年)と、原町で主将を務める小泉直大(なお)捕手(3年)。2人は福島県沿岸部の相双地区で育ち、中学時代は地区選抜チームでともに汗を流した。

 地区は11年の東日本大震災と東京電力福島第一原発事故で大きな被害を受けた。2人も幼い頃、家族と県外に一時避難した。

 「復興五輪」の象徴として福島で開幕した野球の始球式では、被災地でプレーする2人が抜擢(ばってき)され、大役を果たした。

 「まさか初戦で当たるとは」。今大会第6シードの相馬との対戦を自ら引き当てた小泉捕手は驚いた。しかも会場は、五輪の始球式があった福島県営あづま球場。宝投手の球を緊張してミットに収めた記憶がよみがえった。「運命を感じる。これまで見てきたなかで一番の投手と大事な試合で対戦できる」と気が引き締まった。

 一方の宝投手は、「『始球式の時から成長した姿を見せるんだ』という野球の神様からメッセージ」と受け止めた。

 始球式を任された開幕戦の日本―ドミニカ共和国戦はコロナ禍で無観客試合だったが、2人は特別に観戦した。逆転サヨナラ勝ちを目にして、宝投手は「どんなに苦しい場面でも諦めない姿に心を動かされた」。

 日の丸を背負って戦う日本代表選手のように、自分も地元を背負って甲子園をめざしたい――。県内外の高校からの誘いを断り、地元高校へ進学。最速140キロ超を投じる今大会注目投手に成長を遂げた。

 小泉捕手は、主将として13人のチームを引っ張る。昨秋は部員が足りず連合チームで出場したが、今大会は1年生の入部で単独出場をかなえた。「僕はキャプテンとして、佑真はエースとして、お互いプレッシャーはあると思う。責任感を持ってチームをまとめたい」。宝投手も「直大は一発がある手ごわいバッター。強気のピッチングで抑えたい」と意気込む。(酒本友紀子)