パリ五輪の開催まで、1か月を切った。国内でもオリンピックに対する期待、関心が高まっており、男子サッカーにおいても7月3日、代表メンバー18人とバックアップメンバー4人が発表された。今回は久々にオーバーエイジ枠が使われないなど変化があったが…

 パリ五輪の開催まで、1か月を切った。国内でもオリンピックに対する期待、関心が高まっており、男子サッカーにおいても7月3日、代表メンバー18人とバックアップメンバー4人が発表された。今回は久々にオーバーエイジ枠が使われないなど変化があったが、サッカージャーナリスト後藤健生は、これらを好意的にとらえている。日本サッカーの「成長」を示すからだ。

■U-23代表の「強化に力を入れてきた」日本

 また、サッカーの存在感を示すためにもオリンピックは重要だった。

 日本という国では、オリンピック人気が非常に高い。オリンピックで好成績を収めることによって、その競技の人気を高めることができる。人気が出れば、スポンサー収入にもつながるし、テレビ放映の機会も増える。そして、競技人口が拡大しチーム強化にもつながる。

 Jリーグは発足したものの、まだ、プロとしての歴史が浅いサッカーの場合、やはりオリンピックで活躍して存在感を示す必要があった。そのため、Jリーグが発足し、ワールドカップが最大の目標となったとしても、オリンピックでは好成績を残す必要があったのだ。

 そのため、日本サッカー協会はU-23代表の強化に力を入れ、オーバーエイジ枠も有効に使って最強チームを作ろうとしてきたのだ。

■ヨーロッパの「サッカー先進国」と同じに

 サッカーに詳しいサポーターは、当然、ワールドカップこそが最大の目標であることを理解している。だが、サッカーに詳しくない一般のスポーツ・ファンや、4年に一度だけスポーツに興味を持つ「オリンピック・ファン」にとっては、そうした事情は十分に理解されていない。一般紙や放送メディアも、「サッカーのメダル獲得」に大きな期待をかけたりする。

「1968年のメキシコ五輪以来のメダル」という言い方もよくなされる。だが、日本がフル代表で挑み、西ヨーロッパや南米はアマチュア代表や若手選抜が出場していた当時のオリンピックと、23歳以下の代表同士の現在のオリンピックとを比較することは無意味なことだ。

 パリ・オリンピックを目指すチームにはオーバーエイジの選手は招集されなかった。そして、23歳以下でもヨーロッパの一流クラブで活躍している選手は招集しなかった(できなかった)。

 こうして、日本もオリンピックには必ずしも最強チームを編成しないで臨む時代に突入したのだ。つまり、ヨーロッパのサッカー先進国と同じになったのだ。ヨーロッパでは23歳以下でも、本当の一流選手はEURO出場が優先だから、オリンピックには出場しない。

■ランキング上位は「16チーム中5チーム」

 パリ・オリンピックに最強チームで臨めないのは残念なことではあるが、それは日本サッカーがレベルアップしたことの証拠でもある。23歳以下の選手が、これだけ多くヨーロッパで活躍するようになったのは、日本の成長があったからだ。

 しかも、必ずしも23歳以下の世代の最強チームではなかったとしても、それでメダル獲得が不可能になったわけではない。このメンバーでも、パリ・オリンピックで十分に戦えるのではないか。

 16か国しか参加できないオリンピックの男子サッカーは“狭き門”だ。そのため、五輪サッカーで2連覇中だったブラジルも、2016年リオデジャネイロ大会銀メダルのドイツも、2012年ロンドン大会優勝のメキシコも予選で敗退して、パリ大会には参加しない。16チームのうち、FIFAランキングで日本より上位なのはわずか5か国に過ぎない。

 もちろん、FIFAランキングとオリンピックは別物ではあるが、優勝候補はランキング上位のアルゼンチン(2004年アテネ大会、2008年北京大会で金メダル)、フランス(開催国)、スペイン(2021年東京大会銀メダル)の3か国だろう。そして、日本はアメリカやモロッコとともに3か国を追う2番手グループを形成している。

 良いコンディションで大会に臨み、しっかり相手を分析して、全員がハードワークを惜しまずに冷静に戦えば(そして、ほんの少しの幸運があれば)、メダル獲得は十分に可能だと僕は信じたい。

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