「責任は自分にある」  敗戦のショックに打ちひしがれるレゾナックドーム大分のロッカールームで、川崎フロンターレの鬼木達監督は選手にこう話したという。前回王者として挑んだ天皇杯の3回戦、J2大分トリニータ戦。1-3での敗退という結果は受け止め…

「責任は自分にある」

 敗戦のショックに打ちひしがれるレゾナックドーム大分のロッカールームで、川崎フロンターレ鬼木達監督は選手にこう話したという。前回王者として挑んだ天皇杯の3回戦、J2大分トリニータ戦。1-3での敗退という結果は受け止め難いものだったが、それを一身に受け止めようとしたという。

 試合後の記者会見の冒頭に設けられる「試合総括」において指揮官はまず、「チャンピオンを目指した中でこのような結果になってしまったこと、その全てが自分の責任だと思ってます。全てにおいてですね、選手というよりも自分の全ての判断、そこのところだと思ってます」と説明。地元テレビ局など多くのカメラが並ぶ試合後の記者会見室で、非難の矛先をあえて自らに向けようとしていた。

 その後の筆者の質問に、鬼木監督は「本当に大事な大会を失ったのは自分の甘さ」とも表現して、さらに自身に矢印を向けた。地元メディアがドアを開け閉めするたびにピッチから侵入する熱気は、湿度のせいか重さも増していた。

■「鬼さんの責任じゃない」

 一方で、それに異論を唱えるのが小林悠だ。2010年にこのクラブでプロ入りして以降、苦しい時期も、栄光の時期も知っているワンクラブマンに話を聞けば、「いや、それは違います」と否定して見せる。

「いや、鬼さんは“自分の責任だ”って言いましたけど、どう考えても選手の責任だと思います」

 小林は、まっすぐな目でそう説明する。2失点を喫した直後のピッチに投入された小林は、さらに1失点を浴びながらもヘディングでエリソンのゴールをおぜん立て。一矢報いるプレーを見せたが、「もっと存在感や力を出さなきゃいけないし、自分の力不足っていうのはすごく感じてます」とも、やはり、自らに矢印を向けていた。

 監督ではなく、選手の責任――その理由を小林は、「プレーするのは選手なので、監督だけやろうとしても、それを実際にピッチで表現できるのは選手しかいないので、それが足りなかったと思いますし、もっとやらなきゃいけない」と話す。

 そして、「連戦の中の天皇杯で、選手を信じて代えて使ってくれたのにもかかわらず、しっかり選手が応えられなかった」とも悔やみ、「鬼さんの責任じゃないと思うし、ピッチの中で戦ってる自分たちの責任だと思う。今日の試合後に鬼さんが言ったことは、僕は違うなと思いました」と力強く言い切った。熱を帯びたこの言葉は、チームに何よりも必要なものだ。

 そして小林は、苦境を脱するために必要なことも説く――。

(取材・文/中地拓也)

(後編へ続く)

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