南米王者を決めるコパ・アメリカは、準決勝進出の4強が出そろい、残すは3位決定戦も含めて4試合となった。大会はいよいよ佳境を迎え、チャンピオン決定の瞬間まであとわずかである。 そこで、今大会のここまでの戦いを振り返り、主に10代の選手を中心…

 南米王者を決めるコパ・アメリカは、準決勝進出の4強が出そろい、残すは3位決定戦も含めて4試合となった。大会はいよいよ佳境を迎え、チャンピオン決定の瞬間まであとわずかである。

 そこで、今大会のここまでの戦いを振り返り、主に10代の選手を中心とした、これからが楽しみな若手選手をピックアップしてみたい。

 まず今大会で最も注目を集めたと言っていい若手は、ブラジルの17歳、今夏からレアル・マドリードでプレーするMFエンドリッキで間違いないだろう。

 ブラジルファンのなかには、早くもエンドリッキの名前入りユニフォームを着た人も見受けられ(そのほとんどが今大会の背番号9ではなく、以前につけていた21だったが)、人気のほどがうかがえた。

 今大会では出場した4試合のうち3試合が途中出場だったが、彼が交代に備えてピッチサイドに姿を現わすだけで、スタジアム内は大きな拍手と歓声に包まれた。選手交代でこれだけスタンドを沸かせた選手は、今大会全体で見ても他にいない。

 ただし、実際のピッチの上でそれだけの期待に応えられたかというと、残念ながら首を横に振らなければならない。ノーゴールという数字だけの話ではなく、PK戦の末に準々決勝で敗退したチーム同様、ほとんど見せ場を作れずに終わったというのが、率直な印象だ。

 対照的に、チームの中心として十分な存在感を示した恐るべき10代が、エクアドルの17歳、MFケンドリー・パエスである。


17歳にしてエクアドル代表の「10番」を背負うケンドリー・パエス

 photo by Getty Images

 すでにワールドカップ南米予選にも出場しているパエスは、17歳にして背番号10を託されるプレーメーカー。キック精度の高いレフティであり、セットプレーのキッカーも任されるなど、攻撃の中心的存在を担う。

 大会初戦のベネズエラ戦、前半途中に退場者が出てひとり少ない状況になって以降は、いかに彼にいい形でボールを持たせるかを、チーム全体が共通認識として持ってプレーしており、彼への信頼度の高さがうかがえた。

 パエスの成長はもちろん、新たな才能を手に入れたエクアドル代表が、これからどれだけ強くなっていくかも楽しみだ。

 またもうひとり、今年1月で20歳になっており、もはや10代ではないものの、今大会で光る才能を見せていたのが、パラグアイのFWフリオ・エンシソである。

 所属するブライトンでは三笘薫のチームメイトであり、これまでの実績以上に日本での知名度は高いと思われるエンシソだが、高い潜在能力はこれからの活躍を十分に期待させるものだ。

 今大会で見せた、独力で局面を打開してチャンスメイクする能力は、パラグアイ代表でも際立っていた。

 ただし、裏を返すと、とにかく自分でやりたがるのが玉に瑕。今大会でも試合後、パラグアイメディアからダニエル・ガルネロ監督に「エンシソは自分勝手にプレーしすぎるのではないか」との疑問がぶつけられるほどだった。

 グループリーグ3戦全敗を受けて解任されたガルネロ監督も「彼と話す必要がある」と語り、また、具体的なプレーにも注文をつけるなど、指揮官が少なからず頭を悩ませていた様子がうかがえた。

 スピードや技術といった部分では問題ないだけに、ブライトンでの活躍のみならず、今後ヨーロッパでさらにステップアップしていくためには、性格的な部分を改めていく必要があるのかもしれない。

 そして最後に、これまでほぼ無名だったことを考えると、今大会最大の発見と言ってもいいのが、コスタリカの19歳、DFジェイランド・ミッチェルである。

 グループリーグでは1勝1敗1分けの成績を残しながら、惜しくも決勝トーナメント進出を逃したコスタリカにあって、ミッチェルは3バックの右DFとして3試合すべてにフル出場。とりわけその存在が注目されたのは、0-0で引き分けた初戦のブラジル戦だった。

 ミッチェルの対面、すなわちブラジルの左サイドと言えば、ヴィニシウスが爆発的な突破力を見せる、まさにチームの得点源。ときにセンターフォワードのロドリゴが左に流れてくることもあり、そこで彼らにやりたい放題にやらせてしまえば、コスタリカとしては勝負にならない。

 ところが、187cmの長身ながらスピードにも優れるミッチェルは、現在世界最高と言ってもいいほどのアタッカー陣を見事に完封。コスタリカのグスタボ・アルファロ監督も「高さとスピードがあり、1対1に強い」と評価する19歳が、大仕事をやってのけた。

 まだ国内リーグのクラブ、アラフエレンセに所属し、コパ・アメリカを前に国際Aマッチ出場がわずか4試合に過ぎなかった未知の才能は、今大会の活躍を通じて俄然ヨーロッパのクラブからも注目を集める存在となったはずだ。

 アルファロ監督はミッチェルについて、「国内リーグで目をつけ、我々のグループに入れた」と言い、「ヨーロッパでプレーできるレベルにある」と、その才能を高く評価する。

 無名ゆえのサプライズというボーナスポイントもプラスして評価すれば、今大会最高の若手選手はミッチェルだと言ってもいいだろう......と、そんなことを書いている最中の7月8日、オランダの名門、フェイエノールトがミッチェルの獲得を突如発表した。

 世界がどれだけ若い才能を欲し、目を光らせているか。その事実を端的に示す好例である。