土壇場での同点シーンにつながるボールを出した鈴木海音は「トラップしてマイボール繋げるなって思ったんですけど、前見たときに、ジャメくん(ジャーメイン良)がちょっと空いてるなと思ったので。ヘディングでうまく繋げられた」と振り返った。  相手陣…

 土壇場での同点シーンにつながるボールを出した鈴木海音は「トラップしてマイボール繋げるなって思ったんですけど、前見たときに、ジャメくん(ジャーメイン良)がちょっと空いてるなと思ったので。ヘディングでうまく繋げられた」と振り返った。

 相手陣内からのスローインの流れで、磐田の最終ラインは高いところまで押し上げていたが、もしここでトラップを選択していたら、縦の突破の可能性はなくなっていたかもしれない。

 鈴木からのボールを受けたジャーメインには橘田健人がタイトに付いて潰そうとしてきたが、ジャーメインは強引に振り切って、ペナルティエリア内まで運んだ。そこから大南拓磨と佐々木旭に挟まれる形となり、そこからこぼれたボールが結果的にGKチョン・ソンリョンのファンブルを産むことになったが、ジャーメインは「体力的に厳しくて、ほぼつってるような状態で限界のところだったんですけど。なんとかラスト仕掛けて勝負した中で、相手のミスでラッキーなところありましたけど、最後で縦に勝負したから生まれた」と振り返る。

■ジャーメインを残す選択

 山田を加えた攻撃な形は練習でもやっていたという。ジャーメインは「ちょっとスクランブル気味になりましたけど、大記くんが守備のところはやってくれてたので。自分としてはバランスとりながら、前に出ていくタイミングをうかがうというか、攻撃に少し力を残していくイメージでいました」と語る。

 要はFWのマテウス・ペイショット、ジャーメインを残して、左右に古川とブルーノを入れた状態で、さらに攻撃的な山田を加える布陣は、行き当たりばったりのプランではなかったということだ。

 ただ、磐田のベンチサイドからも、当然ジャーメインの体力が限界に来ていたことは分かっていたはず。すでに負傷したGK川島永嗣が杉本光希に代わり、その後、二枚替えで両翼の古川陽介とブルーノ・ジョゼを投入していた磐田にとって、交代カードを切れるタイミングは残り1回だった。

 ベンチには山田の他にMF平川怜とDF西久保駿介がおり、ジャーメインを下げて別のオーガナイズを選択もあったはずだが、横内監督は3回目の選手交代で、5枚を使い切らずに山田だけを送り出した。磐田のエースを最後まで残して勝負することを選択したのだ。

 そうした思いが実る形での同点劇。そして東京ヴェルディ戦の怪我で離脱して以来10試合ぶりのゴールを決めていたジャーメインが、2得点に絡んだ。ここに来てのエースの復活は磐田の残りシーズンにとって大きなものとなりそうだ。

■一方で出た明確な課題

 しかし、前半は狙い通りの戦い方でリードを奪いながら、後半は川崎にペースを持って行かれて、一度は逆転を許したこと、そしてボール保持率35%というデータが示すように、自分たちがボールを保持する時間を長くして、主導権を取るという基準で見てもチームの課題が明確に出た試合でもあった。

 難敵の川崎を相手に、土壇場の同点劇で勝点1を得た磐田だが、同じ日に湘南ベルマーレ浦和レッズに逆転勝利し、17位のサガン鳥栖アルビレックス新潟にアウェーで勝利して16位の磐田との勝点差を1に詰めるなど、これまで下位に低迷していたチームの巻き返しも見られる。

 横内監督が”勝点40”という最低ラインの目標を打ち出しているが、目線を高く上げながら、目の前の戦いに全力で向き合って、勝ち点を伸ばしていくことが求められる。次のアウェー湘南戦は磐田のシーズンを大きく左右しうる戦いだ。

(取材・文/河治良幸)

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