6月22日の鹿島アントラーズ戦の劇的ドロー以降、名古屋グランパス、ジュビロ磐田に連勝し、首位・町田ゼルビアら上位陣との差を着実に詰めつつあった浦和レッズ。7月は6日の湘南ベルマーレ戦を皮切りに、京都サンガF.C.、北海道コンサドーレ札幌、…

 6月22日の鹿島アントラーズ戦の劇的ドロー以降、名古屋グランパスジュビロ磐田に連勝し、首位・町田ゼルビアら上位陣との差を着実に詰めつつあった浦和レッズ。7月は6日の湘南ベルマーレ戦を皮切りに、京都サンガF.C.、北海道コンサドーレ札幌柏レイソルと下位との対戦が続くため、「このまま連勝できれば優勝争い参戦も可能」という期待も高まっていた。

 6月にはこれまでチームをけん引してきたキャプテン・酒井宏樹と副キャプテンのアレクサンダー・ショルツが退団。チームを統率していたベテランの岩尾憲徳島ヴォルティスへ移籍し、長いケガを経て調子を上げていたオラ・ソルバッケンも契約満了となった。これだけ主力級メンバーがいなくなるのは異例中の異例。新キャプテン・伊藤敦樹中心に今一度、まとまって目の前の敵にぶつからなければいけなかった。

 強い思いが6日の浦和駒場スタジアムから感じられた。かつての本拠地でのリーグ戦は12試合負けなしで5連勝中。この日は試合前に激しい雷雨に見舞われ、試合開始時が30分遅れたものの、「This is Komaba」と描かれた圧巻コレオグラフィーが披露されるなど、特別な熱気の中、ゲームが始まった。

■ヘグモ監督「前半は悪くなかった」

 序盤から主導権を握ったのは浦和。開始14分には武田英寿のシュートがGKソン・ボムグンに弾かれクロスバーを直撃。22分にも伊藤敦樹のミドルがGKに防がれるなど、惜しい形が続く。ペア・マティアス・ヘグモ監督も「前半は悪くなかった」とコメントしていたように、飲水タイムまでは湘南はチャンスらしいチャンスを作れなかった。

 だが、湘南はそこから息を吹き返し、前半32分に鋭いカウンターから田中聡が先制点を奪う。これには浦和も意表を突かれる形だったが、時間はまだまだある。選手たちもそこまで動じてはいなかった。

 0-1で迎えた後半。ヘグモ監督はエカニット・パンヤに代えて前田直輝を投入。さらに武田、ブライアン・リンセンとサミュエル・グスタフソン、チアゴ・サンタナを交代。攻撃のギアを一気に上げた。

 最初はグスタフソンがアンカー気味に位置し、伊藤敦樹が右少し前、安居海渡がトップ下に上がったが、伊藤敦樹と安居のダブルボランチが機能していただけに、3人のバランスがやや難しいようにも見受けられた。

 それでも直後の17分、グスタフソンが起点となり、安居から渡邊にボールが渡り、ラストパスがゴール前に通った。そこに走り込んだのがチアゴ・サンタナ。彼は空いたスペースを見逃さず、左足を一閃。値千金の同点弾を叩き出した。

 そして12分後には、渡邊がハーフウェーライン左側でボールを奪い、そのまま持ち込んでスルーパスを供給。反応したチアゴ・サンタナがGKとの1対1を確実に沈め、瞬く間に逆転に成功。駒場スタジアムの盛り上がりは最高潮に達した。

■伊藤敦樹の冷静な指摘

 新体制に移行した浦和に相応しい勝利に近づいた――。誰もがそう考えたことだろう。だが、終盤にまさかの落とし穴が待っていた。

 2失点目の発端は残り1分というところで浦和が自陣で得たFKだ。大畑歩夢が蹴り、マリウス・ホイブラーテンから西川周作へと渡り、守護神は右サイドにいた前田直輝にロングボールを蹴り出した。しかし、前田は畑大雅に競り負け、さらにボールを追ったが奪い切れず、福田翔生から18歳の石井久継へとつながれた。その時、佐藤瑶大が前に出たが、抜かれてしまい、そのまま右足を振り抜かれ、同点に追いつかれてしまったのだ。

「ロングボールからの球際で負けてしまった。瑶大も残ってスペースをカバーしていればよかったところで前に出てしまいました」とヘグモ監督は問題点を指摘した。

 SNS上では前田直輝への批判が高まったが、伊藤敦樹は「蹴る場所も直輝君のところじゃなくて、チアゴに蹴った方が人数も多かった。FKのところを含めて、1つ1つのプレー選択が足りなかった」とチーム全体の問題だと強調。新生・浦和の経験不足が露呈されたと言っていい。

 そこで踏み止まっていればまだよかったが、この2分後に湘南のカウンターを浴びて、ルキアンに3点目を献上する。これはあまりにもショックが大きすぎた。

 田中聡からのラストパスを蹴り出せなかった佐藤は「あの2人(酒井とショルツ)を超えるっていう意味では、今日の僕自身はあり得ない。最後の失点したところを含めて」と自身に苦言を呈したが、やはり3失点は多すぎる。結局、勝ち点3を逃した浦和。彼らは終盤のゲームコントロールという重大な課題に直面したのである。

(取材・文/元川悦子)

(後編へ続く)

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