川村拓夢(ザルツブルク)や野津田岳人(パトゥム)がチームを去り、エゼキエフが負傷離脱するなど、戦力的に不安を抱えるサンフレッチェ広島。今夏の移籍市場で河原創(鳥栖)を獲得するといった噂も流れているが、確かに補強は必要かもしれない。そのうえ…

 川村拓夢(ザルツブルク)や野津田岳人(パトゥム)がチームを去り、エゼキエフが負傷離脱するなど、戦力的に不安を抱えるサンフレッチェ広島。今夏の移籍市場で河原創(鳥栖)を獲得するといった噂も流れているが、確かに補強は必要かもしれない。そのうえで、出番が激減している青山敏弘柏好文らベテランの力も有効活用しながら、苦境を乗り切っていくことが肝要だ。

 そんな広島の希望と言えるのが、今季途中加入で6ゴールという離れ業をやってのけている右ウイングバック(WB)新井直人だろう。3月にアルビレックス新潟から加入した際は賛否両論が飛び交い、彼自身も相当苦しんだだろうが、逆境をバネに新天地で目覚ましい結果を出しているのは称賛されるべき点だ。

「ポジションが(新潟時代の)サイドバックと今のWBになって、立ち位置が変わったことで、役割も180度、変わりました。それでゴール・アシストが取れる確率が高くなっているとは思います。

 与えられたところで結果を出すのがプロ。そうやって生き残っていくことができる選手が上に行ける選手。僕はそう考えながらこの世界で生きてますし、逆にそこが自分の良さなのかなと。つねに与えられたところで考えながらプレーしていることが、広島に来て力を発揮できている1つの要因だと思います」

 新井は冷静の自己分析していたが、新潟、セレッソ大阪徳島ヴォルティスを渡り歩き、数々の修羅場をくぐり抜けてきた男には思考力とインテリジェンスが備わっているのだろう。彼のゴール数というのは2023年の新潟での3ゴールがキャリアハイ。今季はそれをはるかに超える勢いで、その得点力が今の広島の大きな力になっているのは間違いない。

■「後半戦に賭ける思いは強い」

 満田の復調も朗報の1つ。今季はエース級の活躍を期待されながら、5~6月は先発落ちが続いた。「自分のパフォーマンスが落ちて、普通にスタメンから外れて、出場時間が減っていった」と本人も言う。

「その後、(川村らの)移籍などがあって、またポジションをつかみかけるタイミングでゴールという結果を出せた。そこは自分にとってもすごい自信になるので、続けていきたいと思います」と6月29日の川崎フロンターレ戦後に目を輝かせていたが、神戸戦では明らかに動きがよくなっていた。

「自信もつきましたし、やっぱり自分のプレーを出さないと試合に出てる意味がないと思うので、そこは思い切ってやろうっていうのは意識しました。もうちょっとゴールとかに絡んでいければもっとよかったですけど、後半戦に賭ける思いは強いです」と本人も強調。低調だった前半戦を借りを返すべく、後半戦でスパートをかけていく構えだ。

 スキッベ監督が「悪ガキ」と評する彼が躍動しなければ、広島は勝利を積み重ねられない。ある意味、彼はここから先のキーマンと言っていいはずだ。

■「物凄い才能を持った選手」

 もう1人、成長著しいのが18歳の中島洋太朗。広島OB中島浩司を父に持つ彼は2013年U-17ワールドカップで日本の主軸としてプレー。満を持して今季のJ1に参戦してきた。神戸戦も出場時間は後半の25分程度だったが、自ら強引にボールを運んで攻めを仕掛けるなど、非凡な一面をアピール。現地観戦した元日本代表大久保嘉人も「物凄い才能を持った選手」と絶賛していたほどだ。

「どんな形で試合に出ても、チームを勝たせられる選手になっていきたい。若い年齢はとかは関係なく、試合に出る以上はチームを勝たせるつもりでピッチに立っています」と改めて彼はプロの自覚を口にした。

 EURO2024で異彩を放っているスペイン代表のラミン・ヤマルが1つ下ということを考えると、世界基準で言えば、中島のような人材がもっともっと出てこなければいけないということ。それをスキッベ監督はよく分かっているから、彼を積極的に起用しているのだろう。

 今年24歳になる左WB東俊希も含め、広島の若い世代は有望な選手が少なくない。彼らが短期間でグングン伸びて、後半戦の起爆剤になってくれれば、まだまだJ1上位再浮上も狙えるのではないか。そんな期待を込めて、今後の戦いを見守りたいものである。

(取材・文/元川悦子)

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