6月の代表ウイーク以降、2勝2分1敗と足踏み状態が続き、5~7位を行き来しているサンフレッチェ広島。2022・23年に続けて3位という好位置につけていることを考えると、この順位は満足できないはず。シーズン途中に川村拓夢(ザルツブルク)、野…

 6月の代表ウイーク以降、2勝2分1敗と足踏み状態が続き、5~7位を行き来しているサンフレッチェ広島。2022・23年に続けて3位という好位置につけていることを考えると、この順位は満足できないはず。シーズン途中に川村拓夢(ザルツブルク)、野津田岳人(パトゥム)が移籍し、荒木隼人らケガ人も続いたこともあり、就任3年目のミヒャエル・スキッベ監督も選手にやり繰りに頭を悩ませているはずだ。

 6月29日の川崎フロンターレ戦で満田誠を左ウイングバック(WB)、ボランチ、シャドウと3つのポジションで使ったのを見ても、苦悩が色濃く感じられる。それでも満田が中盤に入って試合が落ち着いたのを見て、7月5日のヴィッセル神戸戦もその立ち位置で行こうと決断したのだろう。今回は満田がボランチ、東俊希が左WBでスタート。最前線にはピエロス・ソティリウを据える形で戦った。

 神戸との上位対決を落とすと優勝戦線から大きく後退してしまう。それを回避すべく、前半の広島は積極的な入りを見せた。が、11分にボールを失い、山口蛍から大迫勇也武藤嘉紀とつながれ、最終的に大迫に飛び込まれ先制点を献上。いきなりビハインドを背負うことになった。

■スキッベ監督「アンラッキーな失点」

 それでもすぐさま立て直し、17分には新井直人が同点弾を奪う、左WB東のクロスに飛び込み、浮き球のヘッドをお見舞い。日本代表守護神・前川黛也も動けなかった。

「しっかり東選手がファー見てくれたことで、あの得点が生まれた。叩きつけることをイメージしましたけど、ちょっと距離もあったので、ああいうふんわりしたやつに変えたことによってゴールが生まれたと思います」と新井は明確な意図があったことを明かす。これで3月に移籍してきて18試合6ゴール。「ここまで来たら2ケタを狙ってもいい」と本人もギラギラ感を前面に押し出した。

 そんな新井に触発されたのか、前半の広島は35分のピエロスの決定機、39分の満田の遠目からのシュートなど複数のチャンスを作り出す。シュート数でも神戸を上回り、後半には追加点を奪えそうな雰囲気もあった。

 その希望を打ち砕いたのが、後半開始7分の神戸・広瀬陸斗の2点目だった、初瀬亮の右CKをマテウス・トゥーレルが落とし、ピエロスがクリアしたボールを扇原貴宏が頭で跳ね返す形になり、それがゴール前に飛び出した広瀬に渡る形になったのだ。

 スキッベ監督は「アンラッキーな失点だった」と憮然とした表情で語ったが、サッカーとは皮肉なものだ。これで流れを失った広島はカウンターから山口に3点目を奪われてしまう。その後、18歳の中島洋太朗やドゥグラス・ヴィエイラら攻撃の持ち駒を次々と投入したが、最後にはエゼキエフが負傷退場。10人での戦いを余儀なくされ、タイムアップの笛。彼らは痛い敗戦を喫したのだ。

■満田誠「最後のところであとちょっと足りない」

 これで勝ち点34のまま。6・7日のゲーム次第ではさらに順位が下がる可能性もあり、タイトルへの道は険しくなったと言える。

「ここ2年間、今の監督が来て、優勝争いはしてるけど、最後のところであとちょっと足りないっていうのが続いている。それはやっぱりこういった試合を勝ててないのが一番大きいと思う」と満田が言えば、新井も「勝負を分けたのは神戸が決めた2点目。あそこに全てが詰まっている。ああいう時間帯で決めるところもそうですし、セットプレーから決め切る部分は、より夏場の勝負を分けてしまう。自分たちも決め切る力があるとは思うんで、そこを確実に仕留めていかないといけない」と自戒を込めて語っていた。

 今季の10引き分けが象徴している通り、広島は”際(キワ)の部分”で勝ち点を落としている印象だ。そこがしたたかな町田や神戸との大きな差なのだろう。タレント力も指揮官の采配力も劣ってはいないが、勝負の明暗を分ける局面や細部に甘さがあるのかもしれない。そこを改善していかなければ、再浮上はあり得ない。

「まだまだ後半戦始まったばかり。こういったゲームはこれからも出てくると思いますし、自分たちが勝ち続けていればおのずとチャンスはあると思う。勝たなきゃいけない試合を落とさずにしっかり勝ち点3を取ることが大事なってくるのかなと思います」

 満田の発言をチーム全体が噛みしめ、泥臭くしぶとく勝ち切る集団に変貌を遂げるべき。その術を模索していくしかない。

(取材・文/元川悦子)

(後編へ続く)

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