電撃的にアフマダリエフ戦を突きつけられた井上。その決断の行方が注目されている。(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext  ボクシングのスーパーバンタム級で“絶対王者”と…

 

電撃的にアフマダリエフ戦を突きつけられた井上。その決断の行方が注目されている。(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext

 

 ボクシングのスーパーバンタム級で“絶対王者”として君臨する井上尚弥(大橋)の次戦の行方が、小さくない注目を集めている。

 今年5月6日にルイス・ネリ(メキシコ)の東京ドーム決戦で、同級の4団体初防衛を果たした井上。一部でフェザー転級も囁かれる中で、次戦の相手として有力視されているのは、元IBF世界同級王者のテレンス・ジョン・ドヘニー(アイルランド)だ。すでに両陣営での交渉は大詰めを迎えているとも報じられている。

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 一方で井上は王座剝奪の危機にも瀕している。6月13日にボクシングの団体「WBA」が同団体1位のムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)と「9月25日までに試合を行うように命じた」と正式発表したためだ。

 急転直下の指令ではある。仮にWBAの設けた期限内で試合が出来なければ、井上はベルトを一つ失うことになる。

 もっとも、当人は至って冷静だ。6月28日に実施された囲み取材で「ちょっと出たタイミングも、向こう(アフマダリエフ陣営)のプロモーターの発言にしても、結構、嫌がらせちっくな感じかなと受けて取りましたけど」と苦笑いを浮かべた井上は、「まぁもうベルトにこだわりはないですからね。それで剝奪されるならそれでもいい」と自身の考えを明らかにした。

 あくまで先を見据え、自身のパフォーマンスに価値を見出さんとする井上。そんな王者のスタンスは、海外でも小さくない注目を集めている。

 ボクシング大国でもあるフィリピンの専門サイト『Phil Boxing』のテオドロ・メディア・レイノソ記者は「イノウエが対戦相手から逃げるのはカシメロ戦に続いて2度目だ」と銘打った記事を掲載。井上がバンタム級時代にジョン・リエル・カシメロ(フィリピン)との対戦を実現できなかった過去をふまえ、今回の騒動に対して辛辣な持論を展開している。

「無論、イノウエは快適な日本という環境から出たくはないだろう。そして、彼を支えるボブ・アラム(プロモーター)や日本の関係者たちも、東京ドームを満員にすることができる彼の価値を考慮し、『金脈は日本にある』と訴えている。これは十分に信憑性があり、正当性がある意見ではある。だが、ボクシングはビジネスばかりではない。

 イノウエがこのタイミングでM.J(アフマダリエフの愛称)と戦うことを嫌い、代わりにアイルランド人のドヘニーとの防衛戦にこだわったことには、実は目に見える以上の意味がある。しかし、M.Jはドヘニーを破っていたダニー・ローマン(米国)を倒している。ゆえにイノウエがドヘニーにこだわる理由が理解できないのだ」

 井上がアフマダリエフに勝利していたマーロン・タパレス(フィリピン)を倒している実績を考えれば、暴論とも言える。だが、レイノソ記者は「まあ、イノウエが逃げるのは今回が初めてではない」と指摘。「2020年にカシメロを押しのけ、イノウエが選んだのはジェイソン・モロニー(オーストラリア)だった」とも訴えた。

 もっとも、カシメロ戦が実施できなかったのには明確な理由がある。

 2020年4月当時、バンタム級の2団体統一王者だった井上はカシメロとの3団体統一戦が決まっていた。しかし、世界的に感染が拡大していた新型コロナウイルスの影響で試合は中止に。そうした中で井上は対戦相手を厳選してモロニー戦を米ラスベガスで実施した。

 その後も両雄には対戦の可能性はあった。だが、体重超過など問題行動を連発したカシメロがWBOから王座剥奪の処分を受け、ついには実現に至らなかったのだ。そうした背景を考えても、レイノソ記者の一連の言い分には疑問を抱かざるを得ない。

 

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

 

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