6日に開幕する第106回全国高校野球選手権滋賀大会。彦根総合で捕手だった峯(みね)優太さん(3年)は腰のヘルニアを発症し、選手を続けることを断念した。今は「学生コーチ」としてチームを支える。滋賀大会に臨むすべての3年生たちに「どこのチーム…

 6日に開幕する第106回全国高校野球選手権滋賀大会。彦根総合で捕手だった峯(みね)優太さん(3年)は腰のヘルニアを発症し、選手を続けることを断念した。今は「学生コーチ」としてチームを支える。滋賀大会に臨むすべての3年生たちに「どこのチームも見応えのある試合をして、悔いのない最後の夏を迎えてほしい」とエールを送る。

 滋賀県米原市出身。小学2年生から野球を始め、中学時代はクラブチームでプレーした。高校は、宮崎裕也監督(62)のもとで甲子園に出場することを夢見て、彦根総合に進んだ。

 1年生の秋にベンチ入りを果たし、ブルペン捕手として投手陣を支えた。早くから信頼を集める選手だった。

 だが、選抜大会出場を控えた昨年春に腰のヘルニアを発症し、甲子園のベンチに入ることはできなかった。11月ごろになると腰の痛みがひどくなり、冬場の練習にも加われなかった。

 力のある選手が集う彦根総合。冬場の練習を経ずにベンチ入りできるほど甘くはない。捕手を続けるか、学生コーチになるか、の二択で悩んだ。

 宮崎監督は「スタンドであれ、どこであれ、一つのポジション」と選手に説く。どれも大切なポジションで、チームは一つということだ。「裏方も必要だ」と思った峯さんは親にも相談したうえで、3月ごろに「学生コーチとしてやっていきたい」と宮崎監督に伝えた。

 6月20日、彦根市内の球場。峯さんは選手たちにノックを打ち、ときに「オオイ!」などと声を上げて活を入れていた。すでに高校生とは思えない貫禄があった。練習試合では、助監督の助言を受けながらサインを出し、チームを指揮した。

 コーチを始めて、ブルペン捕手だった経験が生きている。「峯の言うことなら」と誰もが聞いてくれる。その存在感について、秋山昌広主将(3年)は「キャプテンより上、監督のちょっと下ぐらい」と表現する。

 教えることの楽しさも覚えた。自分の指摘が良い投球につながったときなどに、やりがいを感じる。今では、野球の指導者になるという目標ができた。宮崎監督を慕い、その人柄や采配にひかれる。「母校の監督やコーチになりたい」

 この日の練習試合のあと、ベンチを外れた3年生による引退試合があった。峯さんはマスクをかぶってフル出場し、勝利に貢献した。「最後の試合、楽しめてよかった」

 チームに欠かせない存在となった峯さんは、滋賀大会で記録員としてベンチ入りする。(仲程雄平)