開幕してから間もなく1軍で苦しんだ度会。だが、2軍生活を経てからの再昇格後は絶好調だ。(C)産経新聞社課題を克服したゴールデンルーキー 横浜スタジアムに「さいっこうでぇすー!!」の決めゼリフが、再び轟いた。 7月2日のヤクルト戦で3…

開幕してから間もなく1軍で苦しんだ度会。だが、2軍生活を経てからの再昇格後は絶好調だ。(C)産経新聞社

課題を克服したゴールデンルーキー

 横浜スタジアムに「さいっこうでぇすー!!」の決めゼリフが、再び轟いた。

 7月2日のヤクルト戦で3安打3打点と気を吐き、チームを2位に引き上げる立役者となった度会隆輝は、言葉通りの笑顔で喜びを爆発させた。

【動画】これが見たかった!ドラ1度会が高梨から豪快な満塁弾を放ったシーン

 本拠地では5回目となるお立ち台に立ったルーキーだが、前回のヒーローインタビュー(4月26日)では、打撃不振の苦しみが脳裏を過ったのか、目に光るものが見え、決めゼリフも封印していた。それだけに今回の「さいっこうでぇすー!!」には万感の想いすら滲んでいた。

 プロ1年目、スタートダッシュは完璧だった。オープン戦で首位打者を獲得した度会は、勢いそのままにリードオフマンとして開幕スタメンをゲット。オープニングマッチで逆転弾を放てば、その翌日にはグランドスラムをマーク。NPB全体でも小さくない話題を生み出した。

 特大の輝きを放った21歳だったが、その後は打撃、走塁、守備で課題を露呈。三浦大輔監督も「苦しんでいる部分がある」と認め、打率も.231まで下がった5月16日に2軍行きを命じられた。

 即戦力として期待されていたゴールデンルーキーにとって悔しい決定だった。だが、ここで度会は腐らなかった。2軍では鈴木尚典打撃コーチからの「本当に打ちに行くべき球なのか、行っちゃいけない球なのかというのをしっかり見極めれるように」との課題を真摯に取り組み、打率.324をマーク。さらに1軍で127打席中5つしかなかった四球も79打席で10個と選球力も磨いた。

 満を持して晴れ舞台に戻ってきたのは、交流戦残り2カードとなった6月11日だった。ロッテ戦で「9番・右翼」で先発に抜擢された度会は、第1打席で2点適時三塁打を打ち、存在を誇示した。

 見事な“再デビュー”を飾った度会は、そこから止まらなかった。パ・リーグ球団を相手にした6試合全てでヒットと打点を記録し、打率も.385と大暴れ。セ・リーグ再会初戦となった敵地の阪神戦では3本のヒットを全てレフトへ流し、最終打席ではフォアボールを選ぶなど、確実に成長した姿を見せた。

 1軍復帰からここまで、最初の2試合を除き、「2番」に定着。打撃成績も打率.356、出塁率.391と、昇格前の各.231、.286から大幅アップさせた。三浦監督は好転の要因を「打つべきボールをしっかり打てているのかなと思います。厳しいボールってなかなかね、どんなバッターでも打つのは難しいですから。そこは強引にならずに、しっかりと自分の打つべきボールを選んでコンタクトできているのかなと思います」と分析。「ちょっと大人になったかなって感じですかね」と間を置きながら感慨深げに目を細めた。

2軍では己と向き合いながら、打席内での意識を変化させていった。写真:萩原孝弘

「打てないと思った球を見逃すって、1番難しいところなんで」

 度会本人も「ほんとに打てるべきボールをどれだけしっかり打つか。打てないボールを打ちに行ったって打てないんで、打てるボールをしっかりと積極的に振りに行く」と強調。指揮官と同様に打ち損じに対する意識の変化を語る。

「本当に自分がヒットにできると思った球なら打ちに来ますけど、そこからもしっかりと打てない球は打たない」

 一方で、「打てないと思った球を見逃すって、簡単なように聞こえますけど1番難しいところなんで」とも口にする。もがき苦しんだ元凶となった部分は神経を尖らせる度会は、「そこをこれから継続してやるっていうのが1番難しいと思う。ですが、こだわってやっていきたいと思ってます」と誓った。もう同じ轍は踏まない。

 無論、これまでの野球人生で培ってきたバットコントロールの良さと感性の“礎”をないがしろにする気はない。「多少ボールでもヒットにできると思ったら打ちに行きますけどね。結果は本当に運なんで、ボール球をヒットにできることもありますし、ヒットにできない時もあるんで」と語る度会は、「そこに囚われすぎずに、自分の中の選球眼というものに自信を持って、これからもやれたらいいのかなと思います」と、己のヒットゾーンの確立を目指していくと公言した。

「打席の中ではピッチャーの得意球や特徴によって、打撃のイメージは変えるようにはしています。フラットに考えて、コースに逆らわず打つ。場面によってはしっかりと振る時もありますけど、メインはやっぱり後ろにものすごい先輩たちがたくさんいるので。チャンスで打席が回ってきたら返すことをイメージしますけれども、逆にランナーがいない時は僕がランナーに出て先輩たちに繋げる。そういうイメージで打席に入ってるので、本当にいい形で後ろに繋げられるようなことを考えてやってます」

 2番という上位の打順で抜擢されている度会は、タイラー・オースティン、牧秀悟、宮﨑敏郎、佐野恵太、筒香嘉智とタレント揃いの先輩にいい形で繋ぐ意識を持つ。それを大前提とし、決める時はしっかりと決める。打席内でのスタンスはこれまで以上にフレキシブルに変化させているのだ。

 すべては「チームの勝利」のため。「やっぱり昇格してきてからは、本当に1日1日、チームにどれだけ貢献できるかっていうことを考えてやっている」と語る背番号4は、個人の数字に対しても「打率は電光掲示板にも載りますし、携帯でも見れる時代ですけど、そこに囚われすぎずにこれからもやっていきたいと思います」とフォア・ザ・チームを第一に掲げる。

 短期間で課題を克服する適応力は見事と言うほかにない。その武器に活かし、「勝利を掴み、ファンを笑顔にする」との入団時からの目標に向ける“ハマの一番星”は、煌めく空に夢の軌道を描いていく。

[取材・文/萩原孝弘]

【関連記事】黄金ルーキーは“プロの壁”をどう乗り越える? 「控えという野球人生」を知らなかった度会隆輝が2軍落ちで気付かされた課題とは

【関連記事】【DeNA】ドラ1ルーキー・度会隆輝は再び輝けるか? 1軍昇格で外野のポジション獲りへ“再スタート”

【関連記事】DeNA・度会隆輝で再注目 「男の涙」は超一流の証明!?清原も上原も…あの名シーンをもう一度