国際ステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」6日目は、大会の最大の山場となる「富士山ステージ」。各選手のヒルクライムがベースとなっているこのステージは、タイム差が付きやすく、このステージのリザルトが個人総合成績を大きく動かすため、近年はこの…

国際ステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」6日目は、大会の最大の山場となる「富士山ステージ」。各選手のヒルクライムがベースとなっているこのステージは、タイム差が付きやすく、このステージのリザルトが個人総合成績を大きく動かすため、近年はこのステージを制したものが、そのまま大会を制する形になっている。

コースのスタート地点は富士スピードウェイ。東京2020オリンピックでロードの個人タイムトライアルに使用された11.5kmの周回を4周した後、富士山への登坂路の中で最も勾配の厳しい「ふじあざみライン」を上る66.6kmのルートが設定された。周回内ではチーム間の思惑がぶつかり合い、ロードレースとしての展開が見られるが、「ふじあざみライン」の勾配が非常に厳しいため、登坂に入ってからは選手個々の登坂能力が問われるヒルクライムレースとなる。





「ふじあざみライン」を使用した富士山ステージのコース。標高2000mの富士山須走口五合目がフィニッシュだ

個人総合で首位に立つジョバンニ・カルボーニ(JCLチーム右京)が、グリーンジャージでスタートラインの最前列に立つ。カルボーニは、ポイント賞も首位であるが、この日は繰り上げで寺田吉騎(シマノレーシング)がブルーのリーダージャージを着用する。山岳賞首位のレッドジャージを着た中井唯晶(シマノレーシング)とU23首位のホワイトジャージを着たザッカリー・マリッジ(チームブリッジレーン)が共に並んだ。



最前列に並ぶ各賞ジャージとスーパー耐久の公式キャラクター「すぱーく」©️TOJ2024

選手は、富士スピードウェイのサーキットをパレードスタートし、まずは周回コースを走る。



富士スピードウェイのサーキットを走行する選手たち©️TOJ2024

1周目にダヴィデ・トネアッティとマックス・ウォーカー(共にアスタナ カザクスタン ディベロップメントチーム)、寺田吉騎(シマノレーシング)、ライアン・カバナ(キナンレーシングチーム)、山口瑛志(レバンテ富士 静岡)の5名が逃げグループを形成。



5名の先頭集団が形成された©️TOJ2024

2周目完了時の中間スプリントポイントは、寺田が先頭で通過し、ポイントを加算した。
4周完了時点のスプリントポイントはカバナが先着。2位通過した寺田は、この日ポイント賞リーダーをキープできることが決まった。



ライアン・カバナ(キナンレーシングチーム)と寺田吉騎(シマノレーシング)がスプリントポイントで競り合う ©️TOJ2024



先頭に立ち、集団をコントロールするシマノレーシング©️TOJ2024

ふじあざみラインへ向かう区間で、ウォーカーが単独で抜け出すと、残り16km地点でトネアッティが追いつき、アスタナの2名が先行する形に。あざみラインに入るとトネアッティがペースアップし、単独で先頭に立った。



抜け出したマックス・ウォーカーにダヴィデ・トネアッティが合流(ともにアスタナ カザクスタン ディベロップメントチーム) ©️TOJ2024



集団はJCLチーム右京がコントロール©️TOJ2024

メイン集団から、ベンジャミン・ダイボール(ヴィクトワール広島)がアタック。ここにグリーンジャージのカルボーニとメルハウィ・クドゥス(トレンガヌサイクリングチーム)が合流し、3名で先頭を追った。



ベンジャミン・ダイボール(ヴィクトワール広島)がアタック、集団から抜け出す©️TOJ2024

3名はラスト6kmで、トネアッティに追いつき、4名の集団を作る。



4名の集団が形成される©️TOJ2024

ここからトネアッティが遅れ、先頭集団は3名に。3名は、互いに攻撃を仕掛けながらフィニッシュに向けて登坂をこなしていく。



先頭は3名に絞り込まれた©️TOJ2024

厳しい登坂の中、クドゥスが仕掛けた。先行し、集団を揺さぶると、カルボーニはここに反応できたが、ダイボールは堪えられず、遅れてしまった。ここで優勝候補は2名に絞り込まれた。

ラスト1.5km、今度はカルボーニがアタック、抜け出した。カルボーニは軽々と加速するが、クドゥスは後を追えない。クドゥスをあっさり振り切ると、カルボーニはフィニッシュを目指した。



ジョバンニ・カルボーニ(JCLチーム右京)が加速、単独でフィニッシュを目指す©️TOJ2024

カルボーニは、淡々とフィニッシュに向けて走り、ふじあざみライン山頂のフィニッシュラインを切った。守ってきた個人総合のリーダージャージ姿で、この大会において、決定的と言える勝利を上げるという完璧な勝利を飾った。



富士山ステージを見事制したカルボーニ©️TOJ2024

2位には21秒差でクドゥス、3位には23秒差でダイボールが入った。
個人総合では、この日3位に入ったダイボールが一気にジャンプアップし、2位につけたが、この日の勝利で首位を自ら強固なものとしたカルボーニとのタイム差は、2分以上ついている。



五合目で表彰式が行われた©️TOJ2024

カルボーニは「チームメイトとスタッフに今日の勝利を捧げたいと思います」と感謝のコメントを残した。「3名になってからも自分がレースをコントロールできていたので、勝つ自信があった」と言う。欧州のプロチームで走ってきたカルボーニは「富士山はジャウ峠やモルティローロ峠(ともにジロ・デ・イタリアなどで使用される厳しい峠)よりも厳しい登りでした。特にコーナーを抜けた後も勾配がきついのはヨーロッパとは違いますね」と、このステージの感想を語っていた。

ポイント賞は、この日ポイントを積み増した寺田が、カルボーニを逆転し首位に立った。
山岳賞は中井が守っている。新人賞はニコラス・ヴィノクロフ(アスタナ カザクスタン ディベロップメントチーム)が5位に入る健闘を見せ、首位に立つことになった。



ポイント賞を取り返し、笑顔で取材を受ける寺田吉騎(シマノレーシング)©️TOJ2024

残すステージは2つ。各リーダーはジャージを守り切ることができるか__。

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【結果】
ツアー・オブ・ジャパン2024
第6ステージ富士山(67.1km)

1位/ジョバンニ・カルボーニ(JCLチーム右京)2時間11分53秒
2位/クドゥス・メルハウィ・ゲブレメディン(トレンガヌ・サイクリングチーム)+21秒
3位/ベンジャミン・ダイボール(ヴィクトワール広島)+23秒
4位/アドネ・ファン・エングレン(ルージャイ・インシュランス)+41秒
5位/ニコラス・ヴィノクロフ(アスタナ・カザクスタン・ディベロップメントチーム)+58秒

【個人総合時間賞(グリーンジャージ)】第6ステージ終了時
1位/ジョバンニ・カルボーニ(JCLチーム右京)14時間16分44秒
2位/ベンジャミン・ダイボール(ヴィクトワール広島)+2分7秒
3位/クドゥス・メルハウィ・ゲブレメディン(トレンガヌ・サイクリングチーム)+2分10秒

【個人総合ポイント賞(ブルージャージ)】第6ステージ終了時
1位/寺田吉騎(シマノレーシング)53p

【個人総合山岳賞(レッドジャージ)】第6ステージ終了時
1位/中井唯晶(シマノレーシング)32p

【個人総合新人賞(ホワイトジャージ)】
1位/ニコラス・ヴィノクロフ(アスタナ・カザクスタン・ディベロップメントチーム)

【チーム総合成績】第6ステージ終了時
1位/チーム・ブリッジレーン 43時間2分47秒

画像提供:ツアー・オブ・ジャパン2024(©️TOJ2024)

※トップ写真=富士山に挑む「富士山ステージ」©️TOJ2024

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ツアー・オブ・ジャパン2024レポート
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