(30日、第106回全国高校野球選手権愛知大会1回戦、名古屋南4―1惟信) 「とにかくセンターに来い」。3点をリードする九回2死一、二塁、名古屋南の中堅手、吉田玄蔵選手(3年)は雨に打たれながら祈っていた。 あとアウト一つで勝利。自分の前…

 (30日、第106回全国高校野球選手権愛知大会1回戦、名古屋南4―1惟信)

 「とにかくセンターに来い」。3点をリードする九回2死一、二塁、名古屋南の中堅手、吉田玄蔵選手(3年)は雨に打たれながら祈っていた。

 あとアウト一つで勝利。自分の前にゴロが来た。二塁走者が三塁を蹴って本塁へ走るのが見えた。盟友の捕手、加藤稜汰選手(3年)のミットへ勢いよく投げた。「アウト!」

 吉田選手は今も自作の飼育キットで、アリを飼育する「生き物好き」。第一志望の高校では生物部に入ろうと思っていたが不合格。中学3年の終わり、同じ野球部だった加藤選手に言われた。

 「お前、名南(名古屋南)なの? 生物のことをやりたいかもしれないけど、一緒に野球やりたい」

 「いいよ、やろっか」

 いまチームの3年生は6人。入部当初から一緒でけんかも多かったが、ぶつかり合いながら絆を深めた。加藤選手が主将の重圧や悩みを抱えれば吉田選手ら5人が支えた。大会前、帽子のつばに6人で書き合った。「Fight!」「猛進」……。

 吉田選手はこの野球部で、人と関わる楽しさを知った。「次の試合は楽しむことを第一に、期待に応えたい」(渡辺杏果)