暴言に対する処分を下された角田。その内容は話題となった。(C)Getty Images

 F1のRBに所属する角田裕毅の“暴言”に端を発した処分は小さくない物議を醸した。

 厳格な処分ではあった。現地時間6月29日に競技会審査委員会(スチュワード)は、オーストリアで開催されたF1第11戦の予選中に暴言を吐いた角田に4万ユーロ(約660万円)の罰金(2万ユーロ分は同様の違反行為が行われないことを条件に、2024年シーズン終了まで執行猶予付き)を命じた。

【動画】割り込まれて憤怒! 角田が周冠宇に暴言を吐いた問題シーン

 予選1回目でピットレーンに並んでいた角田は、自分のマシンの目の前に隣のガレージから割り入ってきた周冠宇(キック・ザウバー)に不満を爆発。接触事故の危機を感じての苛立ちであったが、チームに対する無線でFワードを用いて「こいつらは馬鹿だ」と発言した。

 咄嗟にディレクターであるマッティア・スピニ氏から「ユウキ、心配ないよ。時間はたっぷりある」と制された角田は冷静さを取り戻してはいた。だが、この時に彼が口にした言葉は障害者に対する差別用語のスラングであり、SNSやネット上で波紋を呼んだ。

 スチュワードは公式決定文書で「Q1中、22号車がファストレーンで列を作っていたところ、別の車がその前方のファストレーンに混じった際に、ドライバーが無線で侮辱的な言葉を使ったことが確認された」と指摘。その上で聴聞会における角田の振る舞いと、処分の経緯について、こう説明している。

「彼(角田)はそれを知った時、『非常に恐ろしく思った』と述べた。彼は自分が口にした言葉の理解が異なっていたとも主張したが、自分の行為の言い訳としては認められないと理解している。スチュワードはドライバーの誠実さを評価するが、使用された言葉は侮辱的な全く不適切であるという事実を強調する。一般公開されているプラットフォーム上でそのような言葉を使用することは、国際スポーツ規約第20条に定義されている不正行為に当たる」

 周冠宇のドライビングに問題があったにせよ、角田が規則に違反した行為だったのは間違いない。ゆえに必然の処分ではあった。ただ、今回の騒動で彼が口にした言葉は、レッドブルのマックス・フェルスタッペンも吐き捨てていた過去がある。

 2020年ポルトガルGPのフリー走行での出来事だ。フェルスタッペンは、当時レーシングポイントのドライバーだったランス・ストロールに対して、角田が口にしたのと同様のスラングと、モンゴル人に対する差別用語を用いて「バカ野郎だ」と激怒した。

 後に本人は「選んだ言葉が正しいとは思わないが、誰かを怒らせるつもりはない」と釈明したが、全面的な謝罪はせず。それでも、この時、フェルスタッペンに対するFIAの処分は一切なし。角田のように聴聞会に呼び出されることもなかった。

 ゆえに今回の角田に対する厳しい処分にはいささかの疑問も生じている。英紙『Mirror』は、「今回の日本人ドライバーが起こした事件は、フェルスタッペンの無線を思い出させる。この時、ベルギー人の絶対王者はペナルティーを受けなかっただけでなく、謝罪すら求められなかった」と指摘。やはりFIAの対応の違いに疑問を投げかけている。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]


【関連記事】角田裕毅の中国人レーサーに対する“暴言”が波紋 660万円の罰金に英紙も驚き「ツノダは苦境に立たされた」【F1】

【関連記事】なぜ角田裕毅は“罵倒”しなくなったのか? 本人が明かした飛躍のワケ「自分は無線の使い方を学んだんだ」

【関連記事】F1の角田裕毅が無線で侮蔑発言 今月2度目の罰金で690万円科される 本人はSNSで謝罪