◆パリ五輪代表選考会 陸上日本選手権 ▽第3日(29日、新潟・デンカビッグスワンスタジアム) 男子走り幅跳び決勝で、東京五輪6位入賞の橋岡優輝(25)=富士通=が7メートル95で2年ぶり6度目の優勝。パリ五輪の参加標準記録(8メートル27)…

◆パリ五輪代表選考会 陸上日本選手権 ▽第3日(29日、新潟・デンカビッグスワンスタジアム)

 男子走り幅跳び決勝で、東京五輪6位入賞の橋岡優輝(25)=富士通=が7メートル95で2年ぶり6度目の優勝。パリ五輪の参加標準記録(8メートル27)突破済みのため、2大会連続の五輪代表に内定した。

 世界しか見ていなかった。2年ぶり6度目の日本一でも、橋岡は「とりあえず、内定できて良かったなっていうことだけです」と表情を変えずに話した。2本目。優勝記録となった7メートル95を跳び、会場からは歓声が上がった。だが、首を横に振り「クソみたいな試合。この1か月忙しくなる」。2大会連続で五輪切符を手にした余韻に浸る時間は一瞬もなかった。

 満足できない理由は「足が遅かった」。これまでの取り組みが体現できていないからこその感想だった。「自分の中で刺激を求めた」と同級生のサニブラウン・ハキーム(25)=東レ=と同じ米国のタンブルウィードTCでトレーニングを決めた22年11月。合流するといきなり、レイナコーチから「なんでそれで跳べる。スプリンターになれ」と言われた。これまではタイミング重視の跳躍だったが、自身でも頭打ちを感じた部分もあったという。

 サニブラウンや22年世陸男子100メートル銅のブロメル(米国)ら世界トップスプリンターと鍛錬を重ね「良いところは盗めるように必死に練習している」とスピードを磨き、今季は2月から跳躍練習に着手。足が速くなればタイミングを合わせることが難しくなるが、3月の初戦で8メートル28とパリ五輪参加標準記録を突破。5月のセイコーゴールデングランプリは日本勢最上位の4位で「わりと足が速くなったかな」と実感もあった。

 自身の成長に手応えがあるだけに「途中で森長(正樹)先生にレイナコーチとハキームから連絡が来て『もうちょっと走った方がいいぞ』と。2人を納得させられるようにしたいです」と冗談めかしく、パリでのリベンジを誓った。東京では6位もメダルまではわずか11センチの差。3年間、この悔しさを持ち続けている。「東京の時は不完全燃焼さが残った。やりきれたなってまず思えること。メダルを獲得しようと思います」。成長を求め続けた成果が、いよいよ花の都で発揮される。(手島 莉子)

 ◆橋岡 優輝(はしおか・ゆうき)1999年1月23日、茨城・つくば市生まれ。25歳。さいたま市立岸中で本格的に競技を始める。1年時は100メートル、2年時から障害や混成種目。東京・八王子学園八王子高1年から走り幅跳びに専念した。日大へ進み、18年U20世界陸上金メダル。19年アジア選手権優勝、21年東京五輪6位。世界選手権は19年ドーハ大会8位、22年オレゴン大会10位、23年ブダペスト大会予選敗退。父・利行さんは棒高跳びの元日本記録保持者で、母・直美さんも元陸上選手。