第106回全国高校野球選手権愛知大会(朝日新聞社、愛知県高校野球連盟主催)は29日から試合が始まる。今大会には、173チーム(181校)が参加し、優勝校は8月7日から甲子園で戦う。 今春の選抜大会では、2008年以来16年ぶりに県勢から豊…

 第106回全国高校野球選手権愛知大会(朝日新聞社、愛知県高校野球連盟主催)は29日から試合が始まる。今大会には、173チーム(181校)が参加し、優勝校は8月7日から甲子園で戦う。

 今春の選抜大会では、2008年以来16年ぶりに県勢から豊川と愛工大名電の2校が出場し、甲子園で激闘を繰り広げた。今大会は選抜出場校をはじめとして混戦が予想される。果たして、100周年の阪神甲子園球場への切符を手にするのはどのチームか。

■総合力の高い愛工大名電

 総合力の高さでは、今夏も愛工大名電が真っ先に挙げられるだろう。夏の愛知大会は3連覇中で、今春の選抜大会には12年ぶりの出場を果たした。選抜では、準優勝の報徳学園(兵庫)と対戦し、延長十回タイブレークまで持ち込んだ。

 投手では、最速140キロ中盤の直球が持ち味の左腕大泉塁翔、伊東尚輝が安定した投球を見せる。

 打撃では、中軸の石見颯真、宍戸琥一、石島健らの長打が期待される。特に、石見は新基準バットの影響を物ともせず、昨秋の東海大会から特大の本塁打を放っている。 だが、今春の県大会ではベスト16に終わり、5年ぶりに夏のシード権を逃した。ノーシードから優勝すれば2019年の誉以来となる。ノーシードの壁を越えて4連覇を果たせるか。

■愛工大名電に打ち勝った東邦

 打力で双璧をなすのが東邦だ。今春の県大会では愛工大名電と3回戦で対戦し、手島慈元が三塁打、高柳大治が二塁打を放ち5―3で打ち勝っている。

 高柳は主将で捕手、投手も務める188センチ、94キロの強靱(きょうじん)な体格のスラッガーだ。投げては最速144キロをマークする。藤江壮太、大島善也らの打撃にも期待したい。

■20年前の再現なるか、中京大中京

 今春の東海大会で20年ぶりに優勝した「守り勝つ」野球の中京大中京も忘れてはならない。左腕エース中井遥次郎は最速147キロの速球で攻める。佐藤爽楽、田中太久哉、宮内渉吾ら2年生投手も注目だ。

 山田頼旺は木製バットを使用する強打者。新基準バットよりも自分に合っているという。昨夏の愛知大会決勝で、2本塁打を放つ勝負強さも持つ。

 20年前、中京大中京は春の東海大会を制し、夏の愛知大会も頂点に立った。愛知勢で、春の東海大会優勝校が夏の甲子園に出場したのはこの時が最後。

 いま、あの時と同じ風が吹いている。

■今春の県大会で優勝した享栄

 享栄は、今春の県大会決勝で中京大中京を破り優勝した。主将で捕手の杉本純也を中心とした団結力が一番の強みだ。

 コントロールが良く安定した2年生エース小山隼和ら、複数投手の継投と打撃がかみ合えば、1995年以来の夏の愛知大会の頂が見えてくるだろう。

■豊川はモイセエフを中心に打線がつながるか

 春夏連続の甲子園を目指す豊川は、今春の選抜大会で好投手を擁する阿南光(徳島)を相手に、4点を奪い善戦した。モイセエフ・ニキータが見せた右翼ポール際の大会1号本塁打は記憶に新しい。

 昨秋の東海大会決勝では、愛工大名電から一回に6点を先制し勝利した。モイセエフを中心に打線がつながれば大量得点もありえる。

 夏の愛知大会、初制覇なるか。

■中部大春日丘、日本福祉大付、至学館、西尾東も力がある

 いわゆる「私学4強」や豊川以外のチームも、冬の間に力をつけている。今春の県大会ベスト4の中部大春日丘もその一つ。

 2年生エース水野拓海は、決め球のスライダーを含む3種の変化球を操る。チームは今春の県大会準々決勝で東邦と対戦し、九回裏から4点を返してサヨナラ勝ち。

 勢いに乗ると、何を起こすかわからないチームだ。

 近年急速に力をつけている日本福祉大付は、今春の県大会でベスト8に入りシード校に。神村学園(鹿児島)を春夏計5回、甲子園に導いた山本常夫監督がチームを率いて、多くの部員が集まっている。

 知多半島の学校として、大府に次ぐ夏の甲子園出場を目指す。

 至学館は主将で中軸を担うエガレバ・クリントンが鍵。エガレバは今春の県大会で2試合連続二塁打を放つ勝負強さを見せた。

 シード校で唯一の公立校が西尾東だ。エース中山直輝の打たせて取る投球が光っている。愛知の公立校として甲子園出場が決まれば大府以来、16年ぶりの快挙となる。

 以上の愛工大名電とシード8校以外にも、昨秋の県大会でベスト4に入った豊橋中央、小牧南も注目校として挙げられる。

 豊橋中央は前島史弥、内山京介らの好投手がそろう。

 今春の県大会ベスト16の安城、大府、三好などの公立校も頭角を現している。

■チームを引っ張る好投手も多数

 好投手を擁するチームにも注目したいところだ。

 愛産大工から校名を変更した名古屋たちばなは、2年生左腕エース中島稜太ら複数の左投手が充実している。

 大成の堺千真は、昨夏の愛知大会からエースナンバーをつけ、キレのある球を投げる本格派。

 豊橋商の北添兼矢は速球が持ち味。

 さらに向陽の2年生左腕エース軍司拓海の奪三振数にも期待だ。

 今年の愛知大会では熱中症対策のため、夕方に開会式を催すこととなった。高校野球への向き合い方は多様化し、いまや長髪の選手は珍しくない。男女問わずマネジャーがノックをする姿も見られる。

 大正、昭和、平成、令和。時代が進むにつれ、高校野球も変わってきた。一方、変わらないのは選手、マネジャーら高校生のひたむきさだろう。

 今年も高校生たちが、高校野球の喜びを存分に味わえる大会になることを祈念している。日々の鍛錬に敬意を表するとともに、全力プレー、そして応援に期待する。

(敬称略、3年生は学年省略)