2度目の頂点に立った笹生優花、それに続く2位となった渋野日向子をはじめ、日本勢が計5人もトップ10入りを果たした全米女子オープン(5月30日~6月2日/ペンシルベニア州)から中2週、今季海外メジャー第3戦のKPMG全米女子プロ選手権(6月…

 2度目の頂点に立った笹生優花、それに続く2位となった渋野日向子をはじめ、日本勢が計5人もトップ10入りを果たした全米女子オープン(5月30日~6月2日/ペンシルベニア州)から中2週、今季海外メジャー第3戦のKPMG全米女子プロ選手権(6月20日~23日/ワシントン州)でも再び日本勢が躍動。山下美夢有が2位タイで、渋野と西郷真央が7位タイでフィニッシュした。

 なかでも、圧巻だったのは山下だ。

 過去2年連続で日本ツアーの年間女王に輝いた山下は今年、積極的に公言することはなかったものの、パリ五輪出場を目標のひとつにしていたことは間違いない。それには、各国代表を決定する基準となる世界ランキングで上位に入ることが求められる。ゆえに今季は、世界ランキングのポイント配分の大きい海外メジャーにも積極的に参戦してきた。

 そうして、第1戦のジェブロン選手権で17位タイ、第2戦の全米女子オープンでも12位タイと健闘すると、第3戦となる今回の全米女子プロ選手権では、ついに世界の強者たちと優勝争いを展開。最終的に2位タイという好成績を収め、大会前には20位=古江彩佳、21位=畑岡奈紗に次ぐ22位だった世界ランキングが、大会後にはそのふたりを逆転して19位に浮上。パリ五輪日本代表2枠のうち、すでに世界ランキング上位が確定し代表権を得ていた笹生に続いて、残り1枠の代表の座を射止めたのだ。


全米女子プロ選手権で2位タイとなって、土壇場でパリ五輪切符を手にした山下美夢有

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 今大会前も、山下はパリ五輪への意識を強く表に出すことはなかった。

「(パリ五輪に)行けたらいいなと思うんですけど、まずは(自らの)目標としているメジャーで、上位で戦いたいという気持ちがあるので、(上位で)戦えるように頑張りたい。(五輪出場は)その結果としてついてきたら......くらいですね」

 迎えた初日、6バーディー、5ボギーと出入りの激しいゴルフとなったが、1アンダー、15位タイとまずまずのスタートをきった山下。2日目も3バーディー、1ボギーの「70」で回って、通算3アンダー、6位タイという好位置につけた。

「初日に比べて、ショットがすごく安定していたので、今日は狙いたい方向に打つことができていた。それがよかったのかなと思います。今日はリーダーボードもあまり見ずにやってきて、メジャーで上位争いを演じているって感じはなかった。やっぱり(メジャーでは)それだけ必死。ひとまず、予選を通過できて残り2日間戦えるので、1打でも伸ばせるように全力で頑張りたい」

 余計なことは考えず、目の前の一打一打に全力を注いでいた山下は、3日目もふたつスコアを伸ばして、トップと2打差の通算5アンダー、2位タイにつけた。

「(コースの)セッティングが難しいので、耐えるところは耐えて、チャンスが来たら決める、というゴルフをしていて、順位のことはほとんど気にしていませんでした。気づいたら、いい順位で戦えていた、というか。ある意味、今回は何も考えずプレーができています。それも、マイナスではなく、プラスに考えて」

 最終日は、3バーディー、2ボギー、1ダブルボギーの「73」。4日間で初めてスコアを落とすことになったが、通算4アンダー、堂々の2位タイでのフィニッシュを決めた。

「最初のティーグランドから緊張して。(日本とは)また違う緊張感があって、やっぱりメジャーだなと思いました。(2位に終わって)悔しいっていうのはあまりなくて。とりあえず、自分のプレーをしっかり最後までやろうと決めていて、できない部分もありましたけど、そこはまあ、少しはできたのかな、と。

 いずれにしても、この舞台で、この位置で戦えるっていうのは初めてだったので、(自分にとって)すごくプラスになりました。優勝には届きませんでしたが、次もまだメジャーはあるので。そこで、しっかり結果を出せるように頑張りたいなと思います」

 大会前に話していたとおり、山下は最後までメジャーでの戦いに集中していた。そしてその結果、パリ五輪出場切符という"最大のご褒美"がついてきた。

 それには、彼女自身、興奮を隠せなかった。取り囲むメディアから「パリ五輪出場はほぼ確定」と言われると、「ほんとですか?(私がパリに)行ける、行けるんですか?」と何度も聞き返した。やはり、山下には五輪出場への強い思いがあったのだ。

「今年、いい成績を出せば(五輪に)行けるチャンスはあるんだ、というのは思っていました。でも、まずは結果を求めるよりも、自分自身が今やること、やりたいこと、やるべきことをしっかりやる。そうすれば、(五輪代表という)結果がついてくるのかな、というふうに考えていました。とにかく(五輪には)出られたらいいなと思っていたので、出られるとなったら、日本代表としてしっかり頑張りたい」

 日本の"絶対女王"に君臨する山下。海外メジャーでの経験を重ねて、その大舞台でも上位争いができるようになった今、前回の東京五輪で銀メダルを獲得した稲見萌寧に続く快挙を果たすことも決して夢ではないだろう。無論、自身が目標とするメジャー制覇もそう遠くない日に実現できるかもしれない。