日本代表が標榜する「超速ラグビー」の片りんは見せたが、まだまだ解消すべき課題は多い(C)Getty Images 6月22日にラグビー日本代表(以下ジャパン)とイングランド代表のテストマッチが行われ、17-52の大差でイングランドが勝利し、…
日本代表が標榜する「超速ラグビー」の片りんは見せたが、まだまだ解消すべき課題は多い(C)Getty Images
6月22日にラグビー日本代表(以下ジャパン)とイングランド代表のテストマッチが行われ、17-52の大差でイングランドが勝利し、2度目の就任となったエディー・ジョーンズHC体制下のジャパンは初陣を飾ることはできなかった。
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昨年のW杯では3位に入り、この6月18日時点での世界ランキング5位のイングランドの特徴は、
・強いフィジカルに基づいた固い守備と、密集近辺のラッシュの強力さ
・セットプレー、特にスクラムが強い
・敵陣に入るまではキックを多用
・キックチェイスからのハイボールの競り合いに強い。隙をついたキックパスからのトライという場面も多い
・安定したプレースキッカーがペナルティーキックを確実に決める。ドロップゴールの成功率も高い
というのが主なもの。
対して、ジャパンは密集近辺での守りを固め、なおかつ、タックル時や密集では規律を守って反則を犯さないという戦い方が守備の基本。その上で、攻撃面では相手の力を上手くかわしてスピード勝負に持ち込み、できるだけ相手に背走させてスタミナを奪って走り勝つというのが理想だ。密集近辺でのぶつかり合いをなるべく避け、素早くスピードあるバックスリーにまでパスを通して、十分なスペースを与えて走らせ、そこに分厚いフォローを送り込んで攻撃を継続する、というのは第二次エディージャパンが標榜する「超速ラグビー」の一つの具体例だった。
実際前半開始早々からの10分間ほどは、全てのプレーヤーがスピーディーに動き、流れをジャパンに引き寄せていた。ただ、ここでラインアウトからのモールにこだわって、BKへの展開を試みなかったこと、反則を誘った時にPGの3点で終わってしまったことで、結果的には流れを手放してしまったように思う。あの勢いのままトライで先制点を挙げていたらチームに勢いが出たのではないだろうか。
強豪チームを相手にする場合、一度失った流れを取り戻すのは困難だ。前半の中盤から、後半の序盤までは完全にイングランドペース。後半10分までに6トライ4ゴールを献上して、一気に試合の大勢を決められてしまった。そのうち、SOマーカス・スミスがラインアウトからのサインプレーで中央突破して奪ったものと、マーカス・スミスのキックパスからのCTBヘンリー・スレードのトライを除けば、後の4本はいずれもフィジカルの強いランナーが突っ込んで来て、有利な体勢でタックルができずに、次々とボールを繋がれて奪われたもの。相手の強みを真っ向から受けてしまい、力負けした結果、どんどん点差が開いてしまったという状況だった。外国出身選手も増え、各選手が厳しい鍛錬で強いフィジカルを作って来てはいるものの、残念ながら世界のトップチームにはまだ追いつけていない。その現実を思い知らされた30分間だった。
では、ジャパンには全く光明がなかったのだろうか。現時点ではまだ、非常にか細いと言わざるを得ないが、いくつかの希望はあった。
まず一つはラインアウトの安定だ、イングランドがほとんど競ってこなかったということを割り引いて考えなければならないが、マイボールは100%確保した。これは昨年のW杯からの大幅な進歩だ。後半の最後に少し崩されたが、ラインアウトモールを跳ね返し続けたのも大きい。初キャップの茂原、原田、3キャップの竹内という国際試合経験の浅いフロントローが200キャップ以上を持つ相手フロントローに真っ向勝負して、引けを取らなかったスクラムも見事。今後の修練次第では、列強のスクラムを押し込むようなシーンが見られるかもしれない。
試合最終盤で2本のトライを取り切ったのも収穫の一つ。この2つのトライは、相手を完全にフィットネスで上回って挙げたもの。こういうシーンをもっと早い時間帯に出現させるためにも、もっともっとバックスリーが走る機会を増やしていきたい。
残念ながら、今回のサマーシリーズの最大の目標であったイングランド戦は厳しい結果に終わったものの、エディージャパン、そして「超速ラグビー」への挑戦は始まったばかり。今後のサマーシリーズはイングランドと同レベルの実力を持つと言われているマオリ・オールブラックス(2試合)、世界ランク13位のジョージア、同8位のイタリアと、気の抜けない相手が続くが、1試合1試合、超速ラグビーを進化させてもらいたい。
[文:江良与一]
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