F1スペインGPのバルセロナと言えば、言わずと知れたチャンピオンズサーキット。過去をみても、ここを制したチームがチャンピオンになった回数が圧倒的に多い。コーナーの速度域が幅広く、マシンの総合性能が問われるレイアウトだからだ。 ただし、20…

 F1スペインGPのバルセロナと言えば、言わずと知れたチャンピオンズサーキット。過去をみても、ここを制したチームがチャンピオンになった回数が圧倒的に多い。コーナーの速度域が幅広く、マシンの総合性能が問われるレイアウトだからだ。

 ただし、2023年に最終セクションが改修されて高速コーナーの連続になり、そのバランスはやや高速寄りにシフトした。だが、より空力性能を中心とした総合力が問われるサーキットであることに変わりはない。

 年間チャンピオンを占うのと同じように、超僅差となっている中団グループトップを見極める機会にもなる。


大勢の記者に囲まれる角田裕毅

 photo by BOOZY

 角田裕毅は言う。

「以前のレイアウトは低速・中速のミックスでしたけど、2023年にレイアウトが変更されてからは中高速コーナーが多くなって、セクター1とセクター3のバランスをどうとって、いかにタイヤを保たせるか、というところになりました。

 セクター1を速く走ろうと思えば回頭性が必要になりますけど、そこに集中しすぎるとセクター3でリアタイヤがダメになって、スライドしすぎてトリッキーになります。セクター3を速く走ろうと思ったらリアのグリップが十分に必要なので、そのコンビネーションが重要です」

 F1カレンダーのなかでも最もタイヤに厳しいサーキットのひとつであり、右の高速コーナーで左側のタイヤをうまく労わることがレースのカギになる。

 そのマシンで予選アタックを完璧に決め、好グリッドを獲得するのがドライバーの腕の見せどころだ。今年の角田は、その点も非常にうまくやっている。

「予選の1周パフォーマンスに集中しすぎるとロングランが厳しくなるので、タイヤマネージメントの優れたセットアップに仕上げていくことが重要になってくると思います。でも、去年もそこはうまくやれていますし、あまり心配はしていません」

 昨年は9位でフィニッシュしながらも、周冠宇(ジョウ・グアンユー/当時アルファロメオ→現キック・ザウバー)とのバトルで相手を押し出したとみなされて5秒加算ペナルティを科され、入賞を失った。

【アップグレード投入の効果はいかに?】

 しかし、今年のマシンVCARB 01は大きく進化した。今季はここまで、どんな特性のサーキットでもトップ10圏内に入る好パフォーマンスを発揮している。

 これは空力効率の向上によって、コーナーもストレートも、ともに速さを発揮できるマシンになったからだと角田は説明する。

「去年のクルマはかなりドラッギーでストレートが遅かったですし、ダウンフォースも十分ではなかったので、他車よりも大きなウイングをつける必要がありました。だから余計にドラッグが増えて、ストレートが遅かったんです。

 でも、今年は去年と比べてまったく別のクルマですし、フロアからダウンフォースを得られているので、最適なダウンフォースレベルにしてもドラッグの問題はありません。ライバルと比べても同じような最高速を得ることができていますし、そこが雲泥の差かなと思います」

 そして今回、RBは大きなアップグレードの投入を予定している。

 一部ではマシンの外観が目に見えて変わるほどのアップグレードだと言われているが、シミュレーターでそのフィーリングを確認した角田は、期待値を上げすぎないよう慎重に言葉を選びながらも、ポジションアップに寄せる期待をにじませた。

「走る前にあまり期待を大きくしすぎたくないので、小さいとか大きいとか言いたくありません。風洞と実走の違いもあるので実際に走ってみないと何とも言えませんけど、シミュレーターで走ったかぎりではマシンのキャラクターが変わるようなものではなくて、全体的にダウンフォースが増えていて、間違いなくラップタイムに表われるはずなので、予選の結果でわかるんじゃないかと思います。

 いつもぐらいのところにいるのか、いつもより上なのか。でも、アップグレードとしては悪くないものだと思いますし、何か違いを感じさせてくれるくらいのものだと思います」

 とはいえ、ここ数戦では苦戦が続いていたアストンマーティンも特殊なサーキットで性能を引き出しきれなかっただけであり、典型的なグランプリサーキットであるバルセロナでは元のポジションまで盛り返してくるだろう、というのが角田の予想だ。

【角田の言葉と表情からにじみ出る自信】

 だからトップ10の入賞圏内に入るのは、決して簡単なことではない。

「アストンマーティンはコースの特性に苦しんでパフォーマンスを引き出せなかったレースもあったと思うんですけど、そこから戻してきていますし、こういう普通のサーキットになってくると強くなると思います。

 今回のアップグレードでどこまで行けるかわかりませんけど、ライバルチームも競争力を上げてくると思うので、トップ10はまだまだ簡単ではないですし、油断は全然できないと思います。とにかく着実にポイントを獲っていきたいなと思っています」

 それでも角田の言葉と表情からは、自信がうかがえた。

 アップグレードに寄せる期待値と、フリー走行から着実にビルドアップし予選・決勝ともに完璧な走りをまとめ上げられるという自信。いや、前戦カナダで大きく落胆するほどのミスを演じたからこそ、今週はパーフェクトなレースをしてみせるのだという決意と言うべきだろう。